劇場版スタートレック8作目、新スタートレックの面々が地球人の宇宙デビュー「ファーストコンタクト」を目撃するお話です。ドラマと同じように２つのエピソードがユニゾンする物語構成のため、劇場版というよりはドラマの特大版年末スペシャルのような印象ですが、相変わらずの安定した面白さです。今作の目玉はなんといってもボーグでしょう。
ボーグは初代シリーズにおいてのクリンゴン帝国のような新スタートレックの人気ヴィランです。ひとことで言えばサイバーゾンビ。
このSFゾンビは出くわす知的生命体を問答無用でサイボーグ化することで無限増殖し、集合意識で動くので個としての意識もない、文字通りとてもエイリアン的な宇宙人です。ゾンビと機械と社会性昆虫が混ざったような不気味さがたまらぬ魅力で、宇宙船のデザインが立方体なのも意思の疎通ができない感じがよく出ていて気が利いてます。ボーグのTシャツがあれば着たいくらいにはお気に入りの宇宙人です。
そんなボーグのクイーンは出るし、地球をまるごと真っ茶色にするしで終始大活躍でした。ボーグ好きとしてはファーストコンタクトの映画というよりボーグの映画でした。かつてボーグがピカード艦長をとっ捕まえた時につけたロキュータスという素敵な固有名がしばし復活したのも嬉しいポイントです。
あとアンドロイドのデータ少佐がボーグにあれこれされる場面も、どこ向けのサービスなのかというくらい無駄にマニアックかつセクシーで笑いました。あんな印象的な鳥肌表現は見たことがありません。
ドラマシリーズに馴染んでくると、この手の奇想が妙に癖になってきます。脳を盗まれたミスタースポックをラジコンで動かしたり、艦長と士官が進化しすぎてトカゲになって卵を産んだり。ちなみにどちらもファンの人気投票で上位に食い込む名エピソードですが、今作もそうしたスタートレックのマニアックな魅力がいかんなく発揮された作品だと思います。
