もはやコミックのヒーローが悪者倒してカッコいい！みたいなお祭り映画ではない。
彼はヒーローではない。
沈黙の守護者。
我々を見守る監視者。
“暗黒の騎士（ダークナイト）”だ。
最後のゴードンの言葉、もうこれに尽きる。
ゴッサムが腐敗しまくって善意である警官も何もかもが信用できない中で、そこで燻ってる火種に火をつけるために現れたジョーカー。混沌に恐怖で混乱と破滅を呼び込む。
そんな中で現れるハービーは、腐敗を改め、暗く閉ざしたゴッサムに光を与えるまさに“光の騎士”。
彼が表にいる限りはバットマンはいらない。
バットマンが存在することで、ジョーカーの様な恐るべき恐怖の存在が次から次に出てくるならとバットマンは“光の騎士”にその街の浄化を託し、去ることを決めるが、、、。
バットマン、ジョーカー、ハービーデント、ゴードン。
クリスチャンベイル、ヒースレジャー、アーロンエッカート、ゲイリーオールドマン。
彼ら4人の存在感が何とも重厚に。特にこれほどのカオスを体現する化身として人間の業を抉りに抉るジョーカーの奇演。
そして、そのジョーカーに対する3人の思いが1つかと思いきや、それが覆る。しかもジョーカーの手によって。ここまで街を思う彼らでさえジョーカーの手引きによりはするものの、悪に堕ちる。
これほど、ヒーローと言う哲学を目で見て伝える作品はない。善も悪も紙一重であり、必ずしも平等ではなく、理不尽なこともある中で、どこまで何を信じて貫いて何を目指すか。
そんな人の信念の限界と言うか、秩序の形成と崩壊、善と悪、希望と絶望が、紙一重に、ギリギリに、且つ完膚なきまでに、どこまでも手加減なく抉りまくって、ゆっくりと、でも確実に痛みと絶望でどんどん削ぎ落としてヒーローの真意を露わにさせた、何ともずっしり重みのある作品。
