子どもの頃はここは野原だった。
小さな木と一緒に大きくなった。
野をかける風は心地よかった。
おばあさん、って、あのおじいさんは1日に何回思うんだろう。何回ここにはもういないおばあさんに話しかけるんだろう。
ここには住めない。
他の人はみんなこの土地から離れていった。けど、このおじいさんは離れられないんだね。だっておばあさんとの思い出がいっぱいだもんね。
お気に入りのパイプを落としたおじいさんは、どんどんと以前住んでいたつみきの下の階へそれを拾いにいく。
そこで、おばあさんとの思い出を、自分の人生を振り返る。ずっと横にはおばあさんがいた。
いま、おじいさんは何を楽しみに生きているんだろう、って思ったけど、パイプと一杯のワインが楽しみなんだね。
ほんとうにそんなふうになるのかな。
私は土地に拘りがない。
地元も好きじゃない。
戻りたいなんて思わない。
行ってみたい、住んでみたい所がたくさんある。
おじいさんとは真逆だ。
けど、なんていうんだろう、そういうものや場所があるっていうのは、強い事だよね。諦めたり忘れたりする事って簡単だから。
おばあさんがいなくなってからおじいさんは笑顔をなくしちゃったのかな。
大爆笑じゃなくていいから、おじいさんの生活が微笑んだ毎日だったら、そういう何かがもう一つあったたいいのに。