このレビューはネタバレを含みます
海に浸食されていく家にレンガを積み上げては、日々を繋ぎ止めているお爺さん。
ある日、パイプを落としてしまい、自ら潜水して取りにいくことになる。
下にゆけばゆくほど直面するのは、積み重ねてきた思い出たちだった。
かつて家族と暮らした部屋は、既に海の一部と化していた。寂しく残った家具を眺めては、ボンベから息を漏らすお爺さん。
吐き出した泡沫にはどんな感情がこもっていたのか考えてしまう。
暖かい思い出であるだけに、独り残されたお爺さんの悲壮感を強く感じた。
家は上に積み上げていく以上、どうしても少しずつ劣ってゆく。
昔は家族で住んでいた大部屋が、今となってはワンルーム、この構造がお爺さんの衰退を表しているように見えて切ない。
それでも彼は、魚を釣って生きてゆく。
どこに行き着くのかはまだ分からない。