すずきひろし

バトルランナーのすずきひろしのレビュー・感想・評価

バトルランナー(1987年製作の映画)
5.0
hulu観賞。DVD廃盤、Blu-ray未発売の傑作を配信してくれたhuluに、まずは最大の賛辞を。ネット配信の可能性を感じます。

ディストピア未来モノ、というのは、世界観や設定が緻密かどうかよりも、そこで生きている人々をどう演出するか、というのが肝要である、というのが、この作品を観ると良く分かります。アメリカの「みのもんた」こと司会のキリアンをはじめ、シュワちゃんを追い回すストーカー達や、TV番組「ランニングマン」に釘付けな観客達、その全員が低俗で野蛮極まりなく、尚且つ非常にイキイキしているんですよね。そんな彼等の姿を観るだけで、細かい設定などどうでも良く「ああ、ここはディストピアなんだな」と一瞬で直感できるし、スクリーンに映る魅力的な彼等を観ていて幸せな気分になります。

更にこの作品が凄いのは、このように徹底して野蛮極まりない人々が支配する野蛮極まりない世界を向こうに回して、シュワちゃん独りの野蛮極まりない存在感が全てを凌駕し、ゲームの構造をひっくり返してしまう所。最初はシュワちゃんが殺される方に賭けていた民衆達も、最後にはシュワちゃんを応援するようになるのですが、それは彼が圧政を敷いていた政府や、その下僕のテレビ局に反抗したからでは無く、シュワちゃんが、彼等以上に野蛮な娯楽を提供したから、というのが最高ですよね。シュワちゃん以外に、こんな話に説得力を持たせるのは不可能だと思います。正に現代では再現不能な唯一無二の80年代を代表する傑作。