すずきひろし

007 スペクターのすずきひろしのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.5
メジャーロックバンドが、これまでの方向性を見失って、難解なアルバムを出した後に、もう一度原点回帰のキャッチーなアルバムを出した、でも、アレンジの端々に、難解なアルバムを経過した痕跡が見受けられる、みたいな作品だと思いました。007のファンが観たいものを、現代最高峰のアレンジで再構成した感じなんだけど、ここまでフッ切れる為には、難解な「スカイフォール」を経過する必要があったのかな、という。

個人的に007には寅さんみたいなマンネリズムを求めているタイプなので「スカイフォール」よりも本作の方が楽しめましたが、今ではそうしたマンネリズムをありがたがる映画ファンだけでは無いと思うので、こんな話をこんなにリッチに作って何の意味があるの?という人の気持ちも分かるんですよね。

娯楽アクション映画の原点としての007の価値は揺るがないにせよ、今では007に影響を受け、更に進化した作品は沢山ある、その中で007シリーズのアイデンティティを模索していた中、良くも悪くも「スカイフォール」と「スペクター」で、ブランドイメージを現代に蘇らせる事に成功したのかな、と思います。

とにかく、如何にも昔ながらの007、というベタな話を、そこまで必要ないだろう!というくらい上品でリッチな映像でこれでもか、と見せまくる、というのは、個人的にはアリだな、と思いました。次回作では無駄に全編70ミリフィルム撮影!みたいな事もやって欲しいです、どうせなら。

酒飲みながら何も考えずに観たい、でも、子供っぽくない、大人のリッチさは映像に欲しい、そういう需要にこれからも答えて欲しいんですよね、007シリーズには。