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ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのd3のレビュー・感想・評価

4.0
ないものねだりの物語だ。
多くのひとが富を望むのはどうしてだろう。きっと不十分だと感じているからだ。

「人が嫌いだから、人と関わらずに済むくらいの富が欲しい」
そう願ったはずの男が、莫大な富を得た果てに望んだものは何だったのか。
息子とのつながりであり、人との絆である。

しかし、それは叶えられない。土台、無理な話なのだ。
彼は莫大な財産を築くという自己実現を果たしたばかりに、人との心のつながりを築くような術を持ち合わすことができないからである。
また宣教師も、逆位相で同じ構図だろう。
コミュニティーでのポジションを築くことはできても、財を築くには別のやり方を知っていなければならない。

莫大な財産を持つ男、信徒から必要にされている男。どちらも憧れられる存在になってもおかしくない。
それでも当人は空虚である。
己の願望を吐き出したところで、そこには血が流れるだけだ。
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