写真は一瞬を切り取る。だからこそカメラを持つものはその場で何を撮るか観察し続けなければならないし、出来事の意味を理解したうえで表現する必要がある。
全編にわたって緊張感が保たれる本作の造りは、まるでカ>>続きを読む
伝聞を信じるか、目の前にいる人間から感じたことを信じるか。
人を見る目を養うのは簡単ではない。人生経験を重ねても、かえって視点が固まってしまうこともあるからだ。
人の顔はひとつではない。相手や状況によ>>続きを読む
事故によりレースから遠ざかっていたモトクロス選手が再び走る楽しさを思い出し、レースに復帰する。
良いように言えばそうなのだが、どうにも主人公の行動に乗りきれない。
借金のかたに母親の形見であるバイクを>>続きを読む
ベテラン俳優の最新作に対して「集大成」という言葉が使われる惹句は珍しくないが、その多くは期待に沿わないものであることも少なくない。
しかし本作はまさに掛け値無しの「集大成」と言えるだろう。
本編中に>>続きを読む
2020年の作品がなぜか2024年末にNetflixでトップ10入りしていた。ネットによって拡められるウソに対する怒りというテーマが、この時期の日本に求められていると考えられてのサジェスチョンがランク>>続きを読む
クエンティン・タランティーノ周辺にいる人々が、彼がいかに映画を愛し、映画から愛されているかを語る。
映画制作は割に合わないビジネスであるが、人々はそこへ魅せられ惹きつけられる。もうひとつの世界を作り、>>続きを読む
プロレス史において確かな足跡を残しながら「呪われた一族」と呼ばれたフォン・エリック・ファミリーファミリーの実話をもとにした物語。
家族愛が強く、家業とも言えるプロレスに対して真剣に取り組んでいるのに次>>続きを読む
喪失を推進力へ変えるクリエイターの強さ。人生を否定的に捉えない視点が作品に反映されているかからこそ、藤野の作品は大勢の読者から支持されているのだろう。
あらゆる西部劇で見たことのある描写の原典の多くはここにあるのではないだろうか。まさに礎的作品である。
そして、顔。役者の顔が素晴らしい。どれだけ予算をかけて、時代考証に忠実な背景を作ったとしても、本作>>続きを読む
山口組三代目亡き後に勃発した、いわゆる「山一抗争」を描く。8年の空きがあるが、中島貞夫監督「制覇」に対しての後編のような見方ができる。原作も「制覇」と同じく志茂田景樹だ。
キャストがみな若い。と同時>>続きを読む
東映で一時代を築き上げた脚本家・笠原和夫のプロットを白石和彌監督が蘇らせる。「仁義なき戦い」ファンとしては高鳴る。
ご本人が生前語ったところによれば、笠原氏が企画立案したところ「全員討ち死に?何を考え>>続きを読む
殺人容疑をかけられた男性のドキュメンタリー。
有罪になれば死刑。無実を主張する男性を信じて弁護士がアリバイ証拠を集める。
被疑者がヒスパニック系で検察と警察、予備審判の裁判官がそろって白人というシチ>>続きを読む
山口組三代目襲撃事件をモチーフにした志茂田景樹の小説が原作。三船敏郎と岡田茉莉子が演じる夫婦を中心にゴッドファーザーよろしく家族の絆を軸に描かれる物語は他の東映やくざ映画群とは一線を画している。
オ>>続きを読む
「…お前らみてぇな馬鹿…嫌いじゃねえぞ」
漫画みたいなセリフがきっちりサマになる漢。それがOZAWA。Vシネ系譜の配信作品で活躍するスターと第一線のアクション監督の化学反応が面白くないわけがない。>>続きを読む
国際派スパイは言語を含めて求められる知識量が多いため、基本的にはエリートであるイメージだ。
本作はタイトルが暗示するようにインテリジェンスとして実績のない、それでいてある技能を持つ人をスカウトしスパイ>>続きを読む
観終わったあとにモヤモヤが残ることでおなじみのスペイン映画であることを強く認識しながら観ていたので楽しめた。
上層階が残したものを食べ、下層階に食べ残しを寄越す。わかりやすく社会の縮図を描いている作>>続きを読む
タイムスリップものが好きなら年齢問わず楽しめるファミリームービー。
バラバラの家族が特異なシチュエーションに放り込まれ団結していく。世界的にみてもお決まりの構成だが、超個人主義のフランスではかえって>>続きを読む
冒頭からずいぶんな珍作だなと感じ少し距離を置いて観ていたが次第に引き込まれていった。
アダム・ドライバーは罪を背負った人間の役がよく似合う。観客は彼の演じるキャラクターが抱える苦悩を通して人間の弱さに>>続きを読む
主人公の生い立ちを描くのは続編の定番だが、本作はしっかりと現在進行している「いま」が物語の中心に据えられており見応えがあった。
役者陣が巧者揃いなので、長めのカットも飽きることなく見入ってしまう。む>>続きを読む
映画会社で大物プロデューサーのもとで働く新人アシスタントの女性の1日を追う。metooのキッカケになったプロデューサーをモチーフにしたものだと思われるが、職種に関係なく働く人はドキュメントのように観ら>>続きを読む
ご本人登場の東映実録もの。それぞれの格闘シーンがドラマティックで格好いい。
登場人物たちをおとしめることなく、それでいて「やくざなんて生き方はくだらない」という中島貞夫監督のメッセージが込められている>>続きを読む
脱北ドキュメンタリー。おばあさんや女児を含んだ一家で脱北を試みる家族と自身は脱北者で息子を脱北させようとする母親。2つのストーリーを軸に構成される。
いま日本に住んでいる我々の目には、近隣の国でありな>>続きを読む
木枯らし紋次郎といえば中村敦夫のTVシリーズが有名だが、こちらは菅原文太が紋次郎を演じている。そして監督は中島貞夫。中村敦夫版とは違ったキャラクター造形を楽しめた。
物語の前半は島送りになった紋次郎>>続きを読む
先ごろ発刊されたキネマ旬報100年記念ムックで山中貞雄監督の書いたコラムを読んだことをキッカケにしばらくぶりの鑑賞。
コラムはずいぶんと尖った内容だったが監督の年齢を考えるとむしろ自然だろう。
早逝>>続きを読む
吹く風が冷たくなると股旅ものが観たくなる。
気が進まなくとも義理のためには筋を通さなければ稼業を生きていられない。
「ヤクザなんて虫けらみたいなもんだ」
美学ではない。時次郎の苦悩が全編を通して描か>>続きを読む
搾取される女性たちの寓話かと思いきやまさかの実話ベースの物語。
出てくる男たちがどれも気持ち悪さを感じさせるのは、彼らベースのルールの異常性になんの疑問も持っていないからだろう。
そこへ表面上は会話の>>続きを読む
人気ドラマシリーズの劇場版。ドラマ版は未視聴だが、本作の物語に絡まないながらも登場してきた人物については「ああ、この人はドラマ版のキャラクターなんだろうね」と理解しやすく楽しめた。
推理をすることや>>続きを読む
実話をベースに作られた物語はまるでドキュメンタリーを見ているかのように社会の一隅を感じさせる。
善意をもとにした活動が築き上げられたシステムであるかのように稼働してしまう危険性を感じた。核となる人間>>続きを読む
閉塞感を抱えた人物たちに寄り添うように日常が描かれる。
はじめは症状による社会との隔絶にモヤモヤしながら観ることになるが、次第に人物の輪郭が現れ、彼らが決して特別ではないことがわかる。誰の身にも起こり>>続きを読む
いまの時代には貴重な存在の時代劇。けっして派手な話ではないが格之進の心情を慮りながら物語を追うことで世界観に入り込めた。
機材や技術の進化によって、これまでに見たことのない表現も野心的で楽しい。
ど>>続きを読む
「地面師たち」のなかで豊川悦司演じるハリソン山中がダイ・ハードに言及していたので久しぶりに観たくなり鑑賞。久しぶりなんてものではないかもしれない。観終わったあと巻き戻ししなくていいダイ・ハードは初めて>>続きを読む
「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマーの半生を追う。
ギリシャ神話において、ゼウスの火を人類に与えたことで罰せられたプロメテウスになぞらえて、オッペンハイマーが原爆を開発したことによる称賛から批難、晩>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
久しぶりに映画らしい映画を観たなどと言えば語弊があるかもしれないが、しばらく触れられていなかった心のなかの一部分をがっちり握られたような作品だった。
誰もが消化しきれないモヤモヤしたものを心に持ち、>>続きを読む
不条理ホラー、あるいはコメディか。
ボーの主観による恐れが表現化されるため非現実的な空間が展開され、観ているものを不可解な世界へ誘う。
個の生き方を縛るのは環境だけではなく、己の思い込みや固定観念に>>続きを読む
相手によって見せる顔を変える。程度の差こそあれど誰しも身に覚えはあるはずだ。
相手の望むものを与えることが上手いコミュニケーションだと言われるくらいであるから悪いことではない。しかし、あまりに変えすぎ>>続きを読む