d3さんの映画レビュー・感想・評価

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室町無頼(2024年製作の映画)

4.2

劇場が明るくなると、隣席のおじいさんが「いやぁ~面白かったな…」とため息交じりにつぶやいた。
事前情報もいらないし、小難しく考える要素もない。民衆から税をしぼり立てる権力者がいて、そいつをぶった斬る話
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密輸 1970(2023年製作の映画)

3.8

どうしてこれほど懐かしさを感じるのか。
かつての東映のようでもあり、日活のようでもあり、マカロニ・ウエスタンの雰囲気も感じる。
それでいて女性たちの団結を見せる現代的なシスターフッド作品でもある。
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映画 おいハンサム!!(2024年製作の映画)

4.0

日常のなかで頭をよぎったようなことがしっかりと具現化され、周囲へ影響を与えることでキャラクターがグルグルと回りだす。
ドラマ版の魅力がそのまま長編化されていて楽しめた。

「幸せになっていただいてあり
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兵隊極道(1968年製作の映画)

3.8

「おどれら日本を裏切ったんじゃ!」
若山富三郎扮する万年二等兵の侠客が上官の悪行を断罪する。

勝新太郎の「兵隊やくざ」の類似作かと思いきや、テイストは違ってややシリアスか。それでも隠しきれないチャー
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レッド・ワン(2024年製作の映画)

3.7

これまで見えなかった存在が見えるようになったとき、新たな幸せを信じられられるようになる。
幸せを信じると人は輝きだす。

ホリデイシーズンにも働く人がいる。その視点が交えられたクリスマスムービー。
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Love Letter(1995年製作の映画)

3.8

中山美穂代表作を改めて。
これほどきれいな映画だったかと驚く。
人物が感情豊かに描かれ、画作りも確かなので、のみ込まれる。

「お元気ですか?わたしは元気です」
雪山に響く哀悼のこもった呼びかけは、こ
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からかい上手の高木さん(2024年製作の映画)

3.3

本作のような感じの映画に見慣れていないため、どう楽しめば良いかわからず困惑していたが、ニヤニヤしながら眺めていれば良いのだとさいわいにも序盤に気づいた。

湖みたく穏やかな海面の瀬戸内、降りそそぐ日光
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ソウルの春(2023年製作の映画)

4.2

2023年韓国でもっとも観られたと言われる作品。韓国の歴史の闇である軍事クーデターが成立した一夜が描かれる。
批判的精神をエンタメに昇華して自国民へ啓蒙する、そして観客も反応する関係性は素晴らしい。
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ラブ・アクチュアリー(2003年製作の映画)

4.0

デジタルリマスターの後押しもあり、20年前の映画だとは思えないほど古びた感じがない。それは本作が普遍的な幸せを描いている証拠でもある。

登場人物がとにかく魅力的。首相とロックスター以外は市井の人々な
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ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)

4.0

ながらくモータースポーツものに対して食わず嫌いであったが、Netflixリミテッドシリーズ「セナ」が目を覚ましてくれた。その連鎖でモータースポーツものの名作として知られる本作を鑑賞。

天才肌の遊び人
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天井桟敷の人々(1945年製作の映画)

3.8

「好いたもの同士にゃパリは狭い」
華の都パリで男と女は繰り返し邂逅する。しかし、好いたもの同士だからといって社会背景は一緒にさせてはくれない。そこは現代とも通ずるのではないだろうか。

メイン舞台とな
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シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

4.2

写真は一瞬を切り取る。だからこそカメラを持つものはその場で何を撮るか観察し続けなければならないし、出来事の意味を理解したうえで表現する必要がある。
全編にわたって緊張感が保たれる本作の造りは、まるでカ
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正体(2024年製作の映画)

4.0

伝聞を信じるか、目の前にいる人間から感じたことを信じるか。
人を見る目を養うのは簡単ではない。人生経験を重ねても、かえって視点が固まってしまうこともあるからだ。
人の顔はひとつではない。相手や状況によ
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GTMAX(2024年製作の映画)

3.2

事故によりレースから遠ざかっていたモトクロス選手が再び走る楽しさを思い出し、レースに復帰する。
良いように言えばそうなのだが、どうにも主人公の行動に乗りきれない。
借金のかたに母親の形見であるバイクを
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ライド・オン(2023年製作の映画)

4.2

ベテラン俳優の最新作に対して「集大成」という言葉が使われる惹句は珍しくないが、その多くは期待に沿わないものであることも少なくない。
しかし本作はまさに掛け値無しの「集大成」と言えるだろう。

本編中に
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ザ・ハント(2020年製作の映画)

3.6

2020年の作品がなぜか2024年末にNetflixでトップ10入りしていた。ネットによって拡められるウソに対する怒りというテーマが、この時期の日本に求められていると考えられてのサジェスチョンがランク>>続きを読む

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(2019年製作の映画)

4.0

クエンティン・タランティーノ周辺にいる人々が、彼がいかに映画を愛し、映画から愛されているかを語る。
映画制作は割に合わないビジネスであるが、人々はそこへ魅せられ惹きつけられる。もうひとつの世界を作り、
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

プロレス史において確かな足跡を残しながら「呪われた一族」と呼ばれたフォン・エリック・ファミリーファミリーの実話をもとにした物語。
家族愛が強く、家業とも言えるプロレスに対して真剣に取り組んでいるのに次
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ルックバック(2024年製作の映画)

4.0

喪失を推進力へ変えるクリエイターの強さ。人生を否定的に捉えない視点が作品に反映されているかからこそ、藤野の作品は大勢の読者から支持されているのだろう。

夕陽のガンマン(1965年製作の映画)

4.0

あらゆる西部劇で見たことのある描写の原典の多くはここにあるのではないだろうか。まさに礎的作品である。
そして、顔。役者の顔が素晴らしい。どれだけ予算をかけて、時代考証に忠実な背景を作ったとしても、本作
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フォールガイ(2024年製作の映画)

3.9

やり口がお笑いウルトラクイズみたいなところも素晴らしい。

激動の1750日(1990年製作の映画)

3.8

山口組三代目亡き後に勃発した、いわゆる「山一抗争」を描く。8年の空きがあるが、中島貞夫監督「制覇」に対しての後編のような見方ができる。原作も「制覇」と同じく志茂田景樹だ。

キャストがみな若い。と同時
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十一人の賊軍(2024年製作の映画)

4.2

東映で一時代を築き上げた脚本家・笠原和夫のプロットを白石和彌監督が蘇らせる。「仁義なき戦い」ファンとしては高鳴る。
ご本人が生前語ったところによれば、笠原氏が企画立案したところ「全員討ち死に?何を考え
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ロングショット(2017年製作の映画)

3.8

殺人容疑をかけられた男性のドキュメンタリー。
有罪になれば死刑。無実を主張する男性を信じて弁護士がアリバイ証拠を集める。

被疑者がヒスパニック系で検察と警察、予備審判の裁判官がそろって白人というシチ
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制覇(1982年製作の映画)

3.8

山口組三代目襲撃事件をモチーフにした志茂田景樹の小説が原作。三船敏郎と岡田茉莉子が演じる夫婦を中心にゴッドファーザーよろしく家族の絆を軸に描かれる物語は他の東映やくざ映画群とは一線を画している。

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BAD CITY(2022年製作の映画)

3.7

「…お前らみてぇな馬鹿…嫌いじゃねえぞ」
漫画みたいなセリフがきっちりサマになる漢。それがOZAWA。Vシネ系譜の配信作品で活躍するスターと第一線のアクション監督の化学反応が面白くないわけがない。
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ザ・ユニオン(2024年製作の映画)

3.5

国際派スパイは言語を含めて求められる知識量が多いため、基本的にはエリートであるイメージだ。
本作はタイトルが暗示するようにインテリジェンスとして実績のない、それでいてある技能を持つ人をスカウトしスパイ
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プラットフォーム(2019年製作の映画)

3.8

観終わったあとにモヤモヤが残ることでおなじみのスペイン映画であることを強く認識しながら観ていたので楽しめた。

上層階が残したものを食べ、下層階に食べ残しを寄越す。わかりやすく社会の縮図を描いている作
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ルー・ガルー: 人狼を探せ!(2024年製作の映画)

3.4

タイムスリップものが好きなら年齢問わず楽しめるファミリームービー。

バラバラの家族が特異なシチュエーションに放り込まれ団結していく。世界的にみてもお決まりの構成だが、超個人主義のフランスではかえって
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アネット(2021年製作の映画)

3.6

冒頭からずいぶんな珍作だなと感じ少し距離を置いて観ていたが次第に引き込まれていった。
アダム・ドライバーは罪を背負った人間の役がよく似合う。観客は彼の演じるキャラクターが抱える苦悩を通して人間の弱さに
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木枯し紋次郎 関わりござんせん(1972年製作の映画)

4.0

主人公の生い立ちを描くのは続編の定番だが、本作はしっかりと現在進行している「いま」が物語の中心に据えられており見応えがあった。

役者陣が巧者揃いなので、長めのカットも飽きることなく見入ってしまう。む
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アシスタント(2019年製作の映画)

4.0

映画会社で大物プロデューサーのもとで働く新人アシスタントの女性の1日を追う。metooのキッカケになったプロデューサーをモチーフにしたものだと思われるが、職種に関係なく働く人はドキュメントのように観ら>>続きを読む

安藤組外伝 人斬り舎弟(1974年製作の映画)

3.8

ご本人登場の東映実録もの。それぞれの格闘シーンがドラマティックで格好いい。
登場人物たちをおとしめることなく、それでいて「やくざなんて生き方はくだらない」という中島貞夫監督のメッセージが込められている
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.2

脱北ドキュメンタリー。おばあさんや女児を含んだ一家で脱北を試みる家族と自身は脱北者で息子を脱北させようとする母親。2つのストーリーを軸に構成される。
いま日本に住んでいる我々の目には、近隣の国でありな
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木枯し紋次郎(1972年製作の映画)

3.8

木枯らし紋次郎といえば中村敦夫のTVシリーズが有名だが、こちらは菅原文太が紋次郎を演じている。そして監督は中島貞夫。中村敦夫版とは違ったキャラクター造形を楽しめた。

物語の前半は島送りになった紋次郎
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人情紙風船(1937年製作の映画)

4.0

先ごろ発刊されたキネマ旬報100年記念ムックで山中貞雄監督の書いたコラムを読んだことをキッカケにしばらくぶりの鑑賞。
コラムはずいぶんと尖った内容だったが監督の年齢を考えるとむしろ自然だろう。

早逝
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