千利休

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの千利休のレビュー・感想・評価

4.2
先日各誌のゼロ年代のベスト映画10を眺めていた。流石に「マルホランド・ドライブ」の一強だろうと思っていたが、本作もかなり高く評価されていた。さて、もはやホラー映画とすら言える本作が「シャイニング」の影響を受けていることは有名であるが、個人的にこれは「地獄の黙示録」だなと思わされる要素が多かった。とにかく前作「パンチドランク・ラブ」が生だとすると本作は間違いなく死である。それがPTA流の宗教哲学と結びついて全体として禍々しい作風となっている(ちなみにタイトルは聖書の引用である。「マグノリア」に続きこの辺の導入の上手さが世界三大映画祭制覇=ヨーロッパでの強さに繋がっていると思う)。さて彼は本作を通じて何を伝えたかったのか。それは母国の欺瞞の歴史と、自らが感じてきた絶対的存在(勿論ここには家族も含む)への不信感であると思う。間違いなく現代の米国人(広義には我々)の体内には石油が流れており、他者のそれを吸い尽くす為に生が続けられているということ。そして盲目的に何かを信じることがいかに愚かであるかということを、我々は日々考えながら生きていかなればならないのだ。凄まじい一作であった。
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