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サムライのbennoのレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.1
アンリ・ドカエ撮影
     ×
   メルヴィル監督3作目


冒頭から釘付け…
ブルートーンの冷たい色調
…まるで静止画のよう
降りしきる雨
…通りを過ぎて行く車の音
窓辺の鳥かご
…ピーピーというさえずり
ベッドに横たわる男
…吐き出される煙草の煙


« Il n’y a pas de plus profonde solitude que celle du samouraï si ce n’est celle d’un tigre dans la jungle … peut-être… »
    ー  « Le Bushido » ー

サムライの孤独ほど深いものはない。さらに深い孤独があるとすれば…ジャングルに生きるトラのそれだけだ…。ー « 武士道 »より ー

新戸部稲造とは無関係…監督メルヴィルの遊び心です…。

そして突然…グラグラ揺れ出す画面…不安、恐怖、虚無…そして孤独。


古びたアパートで一羽の小鳥と共に暮らす孤独な殺し屋、ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)…。唯一、交流があるのは娼婦ジェーン(ナタリー・ドロン)だけ…暗殺の仕事をする際のアリバイ工作のために利用しているのです…。

ある日、いつものように依頼された殺しを遂行したジェフでしたが逃亡時にホテルのピアニスト、ヴァレリー(カティ・ロジェ)に目撃されてしまいます…。

容疑者のひとりとして警察に連行されますが、ヴァレリーは、彼は犯人ではないと証言…。

しかしその後、依頼主の組織から命を狙われることになり…警察、組織の双方から追われる立場に…。


主役のアラン・ドロンがとにかく美しくsexy …ソフト帽にトレンチコート、そしてダークなチェスターコート…顔には一切の喜怒哀楽は無く、ただ淡々と仕事に向き合うのみ…彼が鏡を見つめ、帽子のブリムの角度を入念に確かめる姿…鍵の束から盗難車に合ったひとつを冷静に探す動作…殺しの場面で手にはめる白い手袋…常に死と隣り合わせのエロティシズム…。

台詞は最小限…最初に行動があり、後付けでその意味を咀嚼していく…映像で魅せるストーリー…色彩設計がパーフェクトで静と動の画創りも素晴らしい…映像そのものが『サムライ』です…。

また、フランソワ・ド・ルーベの音楽もカッコいい…。


  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜








ジェフは新たな依頼を受けることに…ターゲットはあのピアニストのヴァレリー…ジェフが愛した女性です…。

彼はバーでピアノを弾くヴァレリーの前に立ち、拳銃の引き金を引こうとした瞬間…張り込んでいた警察によって射殺されてしまいます…。


ジェフがバーに入る前に弾倉に銃弾が込められているのを確認するシーンと、彼が射殺された後に弾倉が空だったことが映し出されるシーン…絶妙な演出!!

ジェフが選択した自らの死に場所…それは惚れた女性の目の前…。

なんてロマンチシズムな"散り際の美学"…。

映像と魅力がダダ漏れのアラン・ドロンに酔いしれる作品ですෆ*

そう言えば…アラン・ドロン自身のブランドで『samouraï 』という香水が…✩⃛⋆*


thanks to ; JTK 師匠 °˖✧☻໌♡☻ັ✧˖°
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