Yoshishun

真昼の決闘のYoshishunのレビュー・感想・評価

真昼の決闘(1952年製作の映画)
4.0
“街1番の孤独な保安官”

従来の勧善懲悪かつ一人で大勢を瞬時に倒していく街の救世主が映される娯楽西部劇とは一線を画し、凶悪犯の脅威を恐れ周囲のサポートも無く1人で立ち向かう羽目になった保安官を描いた異色西部劇。試写時はパラマウント社長から強烈なダメ出しを食らったものの、未だかつてない人間の本音にピントを当てた上質な社会派ドラマとして高い評価を得、主演のゲイリー・クーパーをはじめアカデミー賞4冠を獲得した。

『荒野の七人』のような仲間を引き連れて悪党共を蹴散らす西部劇とは異なり、たった1人で悪党と闘う(しかも焦りと恐れは隠せていない)保安官の視点から、口だけの住人たちへの怒りや西部劇では守られる側である女性の本音が描かれる。アメリカンなヒロイズムは一切なく、ただただ娯楽として消費される西部劇こそ違和感の塊であり、西部劇のような展開など起こり得ないという哀しき現実を叩きつけてくる。

ラストシーンはイーストウッド主演『ダーティハリー』がオマージュを捧げたり、『ダイ・ハード』ではジョン・マクレーンがツッコミを入れたりと、アメリカン・ヒーロー映画に一石を投じた作品として一見の価値はある。
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