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日本沈没のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
3.5
小松左京のベストセラー小説家を映画化し、大ヒットした特撮パニック大作。
監督は森谷司郎。脚本は橋本忍。
特殊撮影の監督は中野昭慶。
(1973、144分)
小笠原諸島にある島が一夜にして消える。
地球物理学者の田所博士(小林桂樹)、海洋地質学者の幸長助教授(滝田裕介)ら調査隊は、小野寺俊夫(藤岡弘)の操縦する深海潜水艇で日本海溝にもぐり、海底に異変が起こっているのを発見する。
やがて、政府は田所博士を中心とした調査プロジェクト・チームを秘密裏に結成。博士は、近いうちに日本列島が海底に沈没するという予測をする。
やがて、首都圏で大災害が発生し、総理(丹波哲郎)は日本民族救出のための対策を迫られる…。

~その他の登場人物~
・阿部玲子(いしだあゆみ):大手財閥の令嬢。小野寺と恋仲になる。
・渡老人(中村鴈治郎):「箱根の老人」の異名を取る政財界の黒幕。「D計画」を首相に提言。
・花江(角ゆり子):老人の身の回りの世話をしている姪。
・中田(二谷英明):情報科学者。D計画メンバー。
・邦枝(中丸忠雄):情報科学者。D計画のメンバー。
・結城(夏八木勲)・小野寺の同僚。後にD計画に参加。

(科学者にとって一番大切なことは)「直感とイマジネーションです」
→ちょっと失笑。

(日本民族の将来   D2基本要綱)
「皇族の1人はアメリカ、もう1人はできればアフリカじゃそうじゃ。
地域別ではなく、ケース別に分けた。
1つは、日本民族の一分がどこかで新しい国を作るために、
もう1つは、世界各地に分散し、その国に帰化するために、
もう1つは、どこの国にも入れられない人のために、
3番目の封筒にもう1つの意見書が入っている。…このまま何もせん方がいい。
1億1千万人の人間がこのまま海に沈んでしまうのが日本国及び日本人にとって一番よいということじゃ」

「民族が国土を自分の国の土地を失ってしまったら、よその国にまで行って生きる権利は、今のところ誰からも保証されていない。それが国連、いや世界の現状だということです」

子どもの頃、映画の後に放映されたTVシリーズを面白く観た思い出がある。小林桂樹の熱気のある役柄が印象的だった。

この映画はCGがない時代における東宝の特撮が話題になったが、大人になってから見ると特撮よりも、沈没から救うために国外に"1億1千万人の日本人"を移住させるという「D2計画」に関心が向かう。
この計画について気がついたこと(感じたこと)を少しあげておきたい。
・各国政府の反対により計画はそもそも不可能だろう。世界の国々が受入れてくれるという発想がそもそも甘い(もしかしたら、原作の出版時と世界情勢や日本の印象・信頼度が変わったのかも知れない)。
・不可能な理由の1つは、日本が世界で最も厳しく移民の受入れをしてこなかった国の1つだからである。
・世界各地で起こっている民族対立や移民の受入制限を見れば、多くの国々が受入れに消極的になる理由が一目瞭然である。
例えば、世界に散らばったユダヤ人の国家建設がどのような状態を招いているかは、悲惨なパレスチナの現状を見れば分かる。
・移住先の国の中に、ソ連や中国があるのは共産主義が持てはやされた時代を反映している。また、移住先に(国交のなかった)韓国と北朝鮮は除かれている。

小松左京はこの物語の第二部を「世界に流浪した日本人の運命」というテーマで書こうとしたようだが、執筆に至らなかった。従って本作は序章のようなものであり、続きがみられないのが残念。
(2006年7月に谷甲州の執筆で「日本沈没 第二部」が刊行)
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