MiYA

日本沈没のMiYAのレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
3.8
原作は2回通読しています。本作の面白さは、海底プレートの動きにより日本列島が海溝に引きずり込まれるという、悪魔的な発想とそれを支える地質学のリアリティ。そして、国民が国土を失うとどうなるのか、という思考実験です。ただ、風呂敷を広げっぱなしでオチのない話でもあるので、カタルシスのようなものがない。映画向きのようで映画向きでない話だと思っています。

映画としては、日本が沈没するというデータを集める前半の展開が丁寧だっただけに、後半の展開が急ぎ足になった印象があります。ラストもこれで終わり?という呆気なさですが、まぁ元からそういう話なんだから仕方ないのです。

この映画で印象に残った点を指摘するなら、日本を救おうと苦悩するエリートたちの姿でしょうか。総理大臣(丹波哲郎)も官僚(二谷英明)も誠実で信頼に足る人物です。本作では一般市民がほとんど出てこなくて、未曾有の事態で市民が戸惑い混乱する姿があまり描かれません。偉い人に任せれば、国を正しく導いてくれるはず。エスタブリッシュに対する国民の信頼がまだある時代だったのでしょうね(遠い目)。
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