Genichiro

ベルリン・天使の詩のGenichiroのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
2.0
アクションが消え失せ、配置された人々の周りをカメラが動く。ハントケの詩を含んだウェットなセリフにうんざり。天使たちは決して邪な考えを読み取ったりしない。「赤ちゃんのために…」「変わってやれるものなら変わってあげたい…」このやり取りの白々しさよ。ヴェンダースのドラマの魅力はある種の苦さ(はっきり言えばアメリカ映画との距離)にあったわけでそれがないとヴェンダースのナイーブな視点が浮き彫りになる。切断された散文的思考の連なり、その中に不意に「論理」が見出されるのではないか。劇中では人々の思考は全てまとまった文章で表現される。彼らは自らの罪について積極的に考える模範的な市民なのだ…ってそんなわけあるか
‼️読み取られたグチャグチャな思考が天使と対話する時に初めてまとまった文章となる、みたいな見せ方がよかったんじゃないかなあ。1987年のベルリンでこのような作品を撮るということの志の高さに感銘を受ける分、それ以前の傑作群と比較するとガッカリするような出来だと思うし、何より今作が世界的に評価されてヴェンダースの代表作となってしまったことは悲劇だと思う。
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