こーひーシュガー

ベルリン・天使の詩のこーひーシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【『パリ、テキサス』の精神的続編としての"天使の詩"―――『ベルリン・天使の詩』】

新しい自分が誕生するには古い自分が死ななければならない。死は恐れるべき存在だが、生まれ変わるために避けては通れない。

1984年にヴィム・ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』で、戻らない過去を嘆くことよりも自力で好きなように作ることができる現在と未来を見据えることを重要視した。それは過去を水に流すのではなく、古い自分を打ち砕き、新しい自分を誕生させることで成立する。かつて夫婦だった男と女の再会を、二人の子供の視点で描きつつ、大人たちの内省を痛々しいほどに現実的な描写で映し出した3年後に本作が公開されたわけだが、本作のラストでダミエルとマリオンが過去に夫婦だったかもしれないことが示唆される。妻が他の男を追いかけ、天使としての永遠を捨て、人間になってしまった。ダミエルは人間となったマリオンを見つけ、自身も想いを捨て切れずに人間になることを決意したのではないだろうか。
ヴィム・ヴェンダースは『パリ、テキサス』で描いた親の子に対する、夫の妻に対する、妻の夫に対する罪滅ぼしを死と誕生という宗教的な要素と絡めて描きたかったのではないだろうか。

映画としては中だるみした場面も多少あり、サブプロットが点在的に挿入されるため退屈さも否めない。だが、キャラの心情の描き方は文句なし。大もとのストーリー展開も好き。