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本日ただいま誕生のmitakosamaのレビュー・感想・評価

本日ただいま誕生(1979年製作の映画)
3.0
スカパーで見た。東映の植木等主演作。といっても喜劇じゃなくいたって真面目。東宝喜劇路線も終わり本格派俳優への転身を図っていたのが良くわかる。

原作は実在する僧侶の自伝らしい。元僧侶がシベリア抑留中に凍傷で両足を切断。失意により信仰を捨て傷痍軍人として懸命に生きるも、人生をはにかみ再び仏門に入り義足で全国を托鉢する…

役では曹洞宗だが、元々浄土真宗の寺に生まれた植木なので正に適役。経を上げるシーンなどは説得力があるわ。

序盤から見てて辛い。嫌がりながらも麻酔も無いままノコギリで両足切断。帰国の際は足手まといになり戦友(中村敦夫・川谷拓三)に裏切られ、原っぱに捨てられ置いていかれる。
絶望のままなんとか帰国も、義足での歩行のため必死にリハビリ。とにかく痛々しい。

なんとか生活も立て直し、戦友と再会し和解。事業の成功、裏切り。
愛する人との出会いと別れ。

再び僧侶となり義足で全国を行脚。途中、育ての親から生みの親へ返すために少女を預かり一緒に旅に出る。
浮浪者(というか物乞い)の集団に入り生活するが、そのうちの一人をすくうため少女と浮浪者は人知れず旅に出る。
母親に届けることを断念する僧侶。悲しいなぁ。
しかし先に母親を見つければ良かったのに、というのは言っては野暮なのか???

ゲスト、というかほぼ友情出演に近い形でクレイジーキャッツメンバーはフル参加(石橋エータロー除く)。
お陰で中途半端にクレイジー映画みたいになったとは思う。植木等の役者としての自立を考えるなら、ちょっと余計だったのでは?
まだまだ喜劇俳優の色が見え隠れはするけど、性格俳優(変な言葉だよな)への第一歩となる一作。この後黒澤の「乱」と木下の「新・喜びも悲しみも幾歳月」と進化が続くと思うと感慨深い。

短期間上映の上、長らくフィルムが損失していたらしい幻の映画とのこと。
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