ワンコ

エイリアンのワンコのレビュー・感想・評価

エイリアン(1979年製作の映画)
5.0
【完璧な生命体の造形美/絶望/エイリアン祭③】

※最新作「ロムルス」公開前に、映画「エイリアン・シリーズ」をふたつの前日譚から長い物語を時系列に観返した。

宇宙輸送船という密室、得体の知れない異形の異星生命体と酸の血液、秘密のミッションを隠しているアンドロイド。

“E.T.”が友好的な異星人の総称になったのに対して、この作品を通じて”エイリアン”は凶暴で悪意のある異星人を指す言葉になるという変な現象も起きた。

逃げ場を失った人間は、この状況をどう乗り切るのか。

そうしたハラハラもこの映画作品の大きな魅力でもある。

この「エイリアン」は、SFホラーの古典にして金字塔、そして、40年以上にわたる映画エイリアン・シリーズの起点になった作品だ。

1970年代はアメリカにとっては高水準のインフレなど暗い時代とされているが、映画産業が花開いた時代でもあり、「エイリアン」は70年終盤の代表的な大ヒット映画作品でもある。

この「エイリアン」は設定のユニークさやアイデアもそうだが、後のアートシーンにも大きな影響を与えたエイリアンの造形美や、輸送船などスペースシップのデザインも大きな見どころだ。
世界中で展示会が開催されたり、数々のアートブック、フィギュアや模型も制作された。

また、不穏なストーリーは、得体の知れない1970年代のアメリカの息苦しさを表しているようにも思える。

「ある事態が発生したら、ルートを変更する」

息苦しい1970年代にあって、アメリカは他に選択肢はなかったという疑心暗鬼な状況を示しているようにも感じられる……が、しかし、アンドロイド・アッシュが雇用企業のミッションを遂行し乗組員を絶望に導いたことから考えるに、何か大きな力、つまり、何らかの陰謀が働いて、こんな状況に陥ったに違いないとの考えも人々の間にはあったのだろうと想像もする。

息絶える(?)間際のアッシュが言う「完璧な生命体」の定義が恐ろしい。

理想ではないが”完璧”なのだ。

ある意味、自由資本主義と言いながら、資本主義だけがもてはやされるような感じもする。

それに今改めて考えると、「プロメテウス」や「エイリアン・コヴェナント」のデイヴィッドのように、AI(人工知能)がいつか独り歩きし、神に成り代わって人類を滅ぼすんじゃないかみたいな気にもなる。

繰り返しになるが、40年以上にもわたってシリーズが続く記念すべき第1作目の作品で、シガニー・ウィーバーの出世作でもある。

エンディングの場面では、リプリーが乗り込んだ脱出船にもエイリアンがいて、明滅する光の中で蠢く姿には、初めて観た時にもうダメじゃんみたいにビビりまくったことも思い出した。
最後の最後までハラハラが止まらない。

こうしたストーリー展開はもとより、アートデザインも本当に秀逸な作品だと思う。

敬意を払わずにはいられない。
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