しんた

πのしんたのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.0
これが制作費6万ドル、しかもダーレン・アロノフスキー初期の監督作品というのだから恐れ入る。
数学の持つ魔力に魅入られた男が迷い込んだ奇妙な迷宮は現実なのか妄想なのか、限りなく世界の境界が曖昧でそれを破綻させずに描き切るところに映画作家としての強い矜恃を感じる。
時にグロテスクで、時に美しく破壊と破滅へと向かう男の姿は不安神経症や統合失調症にでもかかった人間の心境風景を見せられているようだった。それなのに押し付けがましくなく、娯楽映画としてすんなり観られる(難解ではあるが)。
モノクロの映像もざらついていて作品の世界観とマッチしている。どこかのパンクバンドのMVでも観ているような刹那的な感覚も本作の面白さである。良い映画だった。
しんた

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