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コミッサールのmhのレビュー・感想・評価

コミッサール(1987年製作の映画)
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ロシア内戦(ロシア革命後の混乱 1917年11月7日-1923年6月16日)のウクライナが舞台。妊娠した赤軍政治将校を主人公にしたソ連製反戦映画。
ユダヤ人の扱いがソ連にいるユダヤ人たちの逆鱗に触れたようで、二十年もの間、未公開となっていたといういわくつきの映画。
1980年代後半から始まったペレストロイカ(体制革命)の一環、グラスノスチ(情報公開)でようやく日の目を見て、第38回ベルリン国際映画祭(1988)で審査員特別賞を受賞する。
多くの映画では悪役として描かれる政治将校が主人公というのがまずふるってる。望まれぬ子だったため中絶しようとするも間に合わず、ひとり軍から離れて、接収という形でユダヤ人の家庭に転がり込む。
子だくさんの奥さんから子育てについて学びつつも、戦いがすぐそこまで迫ってきているという設定がめちゃくちゃ面白い。
主人公側のロシア赤軍と敵である白軍の闘いなので、ユダヤ人たちが受ける迫害はヨーロッパに根強い反ユダヤ主義であって、ナチスドイツは関係ない。これが地味に難解。
中盤から、悪夢や悪い予感のイメージ映像みたいなのが挟まるようになる。それがけっこう長いんだけど、ラストのカタストロフィの呼び水にもなっている。
絶滅収容所に向かうユダヤ人たちという問題のラストは判ってても強烈だった。
それだけに、怒った側の気持ちもちょっとわかる。我々をナチスドイツと一緒にするなみたいなことだったんだろうね。ウクライナは特に反ユダヤ、反シオニズムが色濃い土地なので、痛いところを突くなみたいな面もあったんじゃないかなと分析するけど、実際はどうなんだったんだろう。
特典映像も見た。
いまだにロシアでは上映されておらず、ロシア以外で上映されているとのことだった。
結局、この一作しか撮れなかった監督さんはしょげているのかと思ったら、特典映像でずーっとしゃべっててご機嫌みたいでよかった。
面白かった。
mh

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