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都市とモードのビデオノートのAWのレビュー・感想・評価

4.2
「ぼくの中で戦争は終わっていない。大戦で死んでいった人たちの代わりに、これをやってるんじゃないか。そう思うことがある」

1943年生まれの山本耀司は、撮影時点、すでに西洋のモード界で敬意を集める日本人になっている。

驚異的な仕立ての技術、服飾に関する膨大な知識、風合いとフォルムに対する豊かで鋭い感覚。
パターンの理論を示し、生地をハサミで裁ちながら、圧倒的なカリスマ性と判断力、技術でチームに道を示す彼は、さながら高潔な宗教者だ。

普遍と革新の両方を噛み砕いて、生地に乗せることができるようになってしまった自分は、経験を積み過ぎたせいだろう、まるで怪物だ、とほとんど自嘲気味に言う。自分は何か弾みのような感じで、こうして西洋の只中で仕事をやらされている気がする、と。

闘いは続いている。

自己と向き合い、時代を見つめ、技術を磨き、人を感じ続けた果てに、西洋世界で屹立する日本人。その男から、同様にして世界的映像作家になったドイツ人へ伝えられる言葉。それがこの映画の核だ。

ひと言ひと言が、青山店の入口のシグネチャー同様、碑文のように深く切り立つ。

未来は信用しない。
過去を背負い、今に集中しきる。

このような姿勢で生まれたものが、結果として、未来を内包する。

ビデオノートに残されたYohji Yamamotoの衣服たちは、2022年という未来から見ても、まったく、何ひとつ古びていない。
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