kuu

半次郎のkuuのレビュー・感想・評価

半次郎(2010年製作の映画)
2.5
『半次郎』
映倫区分 G
製作年 2010年。上映時間 121分。
俳優の榎木孝明が企画を立ち上げ、明治維新の時代に活躍した薩摩武士・桐野利秋(中村半次郎)の生涯を描いた時代劇。
『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠が、西南戦争で非業の死を遂げるまでの桐野利秋(中村半次郎)を描く。
主人公の半次郎を演じるのは、13年かけて企画を実現させた榎木孝明。
EXILEのAKIRAが、親友の永山弥一郎役で時代劇に初挑戦する。
現代の世の中に大切な何かを問いかける半次郎の生きざまを堪能したい。

幕末の動乱期。薩摩の若き侍たちの中心的存在である西郷吉之助(田中正次)が京に上ると聞いた中村半次郎(榎木孝明)は一行に加わることに。上京した半次郎は、人並み外れた度胸の良さと剣の腕などで、たちまち名をとどろかせるようになる。
さらに半次郎は、長州藩士の鮎川小次郎(葛山信吾)や薩摩藩士の永山弥一郎(AKIRA)と交流を深め。。。

今作品の前半はお話がバラバラで、ある程度この時代に明るい人でないと確り理解できないかもしれない。
しかし、後半は、急速に近代化する世界の中で、個人と伝統的な名誉の物語として、より焦点を絞って描かれるようになり面白さは増すかな。
今作品の善き点は、描かれた歴史上の人物に敬意を払っていること。
キャラの名前は日本人以外には伝わりにくいやろし、ニッチな戦争映画としては(日本人以外には)妥当な量のキャラが与えられている。
西郷隆盛は、長い時間登場するわけではないが、城山でのクライマックスの戦いの後、切腹する姿に尊敬と共感を禁じ得ない、台詞回しの演技力は置いといて、威厳のある人物を巧く演じていた。
戦闘シーンは、エンタメとしては残念ながら物足りない。
物足りないが、実際の戦闘に置いてはこないやったんちゃうかなぁとリアリティーは感じた。
今作品の主人公たち薩摩人の使う示現流の怖さは想像がつくし、考えてみたら恐ろしい。
少し話がそれますが、
薩摩に伝わる示現流ってのは日本剣術の流派のひとつで、『チェストー!』の掛け声なんか漫画などでよくみかけるし、よく表現されてるから知ってる人もいるんじゃないかな。(実際には違うそうやけど)
また、示現流には蜻蛉の構え(蜻蛉の構えは左足を前に出し、剣を持った右手を耳の辺りまで上げて、左手を軽く添えるという八相に似た構え)てのがあり、その構えから繰り出される
『一撃必殺』
で有名な剣術。
狂ったような声(奇声)と突進で、しかも猪みたいなオッサンが真剣を持ち攻めてこられたら、剣術(武道)の修行をしてないものなんか、たじろいでしまいアッちゅうまに斬られちまうやろうと思う。
当時、新選組にさえ
『薩摩の初太刀は外せ』
と云わしめた示現流。
示現流で最も重視し、教え込まれるのは
『刀は抜くべからず』(武に優れた人物であれば、争わずに済ませられるという教え)やそうで武士道の真髄。
また、示現流の一般的によく知られている特徴は、
『一の太刀を疑わず、二の太刀は負け』
という考え。
その、恐ろしい理念から突かれる激剣はヤバい。。。
余談のよながら、先にも書いた『チェスト~』のかけ声は、実際には『エ~イ!』と激しく叫ぶ。
文字にするなら『キィエーイ』とか『チエエ~イ』といった感じ。
猿叫(えんきょう)と呼ばれてるけど、今作品で薩摩人がそないな奇声あげるのは、チョイ笑いすら生まれかねないが、サイコパス感さえ見え隠れする恐ろしき猿叫を今作品は巧く描けてたかな。
今作品で描かれているんは、ネイティブなレンズを通しての出来事で、日本の急速な工業化は前面に出てこないし、銃と剣、近代と伝統の対立でもない(多少はあるかな)。
登場人物は西洋の服を着ているが、それは彼らを定義するものではなく、『新しい日本』に身を投じることを意味するものでもない。
彼らは皆、開国前と同じ人間であり、祖父たちと同じように名誉と栄光の観念で満たされている。
結局のところ、今作品の主人公は、歴史の中で過小評価されている。
この時代に確かな関心を持つ人にこそ見る価値があり、この映画に描かれた真の人々について考えを巡らせれば、より明確になる。
わが国初の陸軍大将は西郷隆盛なら、初代陸軍少将は、今作品の主人公中村半次郎こと桐野利秋。
『西郷どん』『翔ぶが如く』『田原坂』とか、さまざまな桐野利秋像が描かれてる知るひとぞ知る『人斬り半次郎』。
榎木孝明の半次郎は容姿も相まってか、ちょい上品やったが、しかし、熱いものが伝わってくる。独特の『キィエーイ』の猿叫の連呼がかなり印象的でした。
テリファー見たときみたいにかなり怖いトラウマ。
戦闘シーンは泥臭く、血なまぐさく、リアリティーさで云えばよくできていると感じたかな。
ただ、音楽が映画の雰囲気に合っていなかったり、ストーリーがちょっと雑は否めない。
とにかく、時代が変わってもブレずに武士道を一直線に貫いた半次郎の生き様は個人的にカッコよかったかな。
『ラストサムライ』のような明確な物語性はないが、また、歴史上の人物をバラバラに語るような作品やけど、それも映画の楽しみの一つではないやろうか。
kuu

kuu