ボブおじさん

未知との遭遇のボブおじさんのレビュー・感想・評価

未知との遭遇(1977年製作の映画)
4.2
「スター・ウォーズ」と並び、1970年代後半にSFブームを巻き起こした、スティーブン・スピルバーグの代表作の一つ。

公開当時31歳のスピルバーグが未確認飛行物体UFOと地球人との関係を「ジョーズ」以上のリアリズム演出で力強く描く。

昨日、映画館でジョーダン・ピールの「NOPE/ノープ」を観て、久しぶりにこの映画を観たくなり自宅で再度鑑賞。

「ノープ」は、この作品を意識しながらも、真逆のアプローチで作られている。 
様々なメタファーを用いて、見る人によって色々な解釈ができる脚本は、見終わった後も悶々とし考えさせられる映画だった。

一方、「未知との遭遇」は見終わってから、考えたり、悩んだりするする必要のない映画だ。

そもそもドラマチックなストーリーが、あるわけでもなく、リチャード・ドレイファス以下、キャストは地味。

デヴィルズ・タワーという、ワイオミングの荒野にそびえる岩山に、巨大なシャンデリアのような宇宙船が現れ、地球外生命と接近遭遇するクライマックスを見せるためだけの映画だ。

それまでの過程は、ここにたどり着く為の前振りに過ぎない。

出るぞ、出るぞと期待させておいて肩透かしを喰らわせる手法は、「ジョーズ」以来この監督のおはこ芸。

観客をさんざん期待させておいて、期待値がピークに達したところで見せる圧倒的な映像と斬新な音響は、40年以上たった今見ても感動を覚える力技。

ラストは、ジョン・ウィリアムズの音楽と共に、宇宙船が再び空へ舞い上がって行き暗闇に消え尽くすまで完全に魅了された。

この映画のせいで、それまで定番だったタコの親分の様な宇宙人は、すっかり出番を失ったし、宇宙船デザインのハードルが一気に上がってしまった。


ジョーダン・ピールが自分の伝えたい事を比喩的な技巧を駆使して、観客の脳に委ねる映画を作ったのに対して、スピルバーグは自分の子供の頃の夢(宇宙船を見たい・宇宙人に会いたい・ここでは無い何処かへ行きたい)を映画の中で素直に表現し、観客の心を掴みにきている。

改めて観て「NOPE/ノープ」は、文章化することによって、映像化された難解な表現をより分かりやすくできるだろうが、「未知との遭遇」は、文章化することが不可能な映画だと感じた。

新作映画を見て、過去に見た映画を見返すきっかけを作ってくれたジョーダン・ピールにも感謝したい。