このレビューはネタバレを含みます
語らざるところに魅力ある映画。
辞任後のニクソンの単独インタビューTV番組を成功させた英国デビット・フロストのインタビュー番組のできるまでの物語。
まず、冒頭、番組作りのきっかけになるシーン。主人公フロストがTVでニクソン大統領がホワイトハウスを去る映像を見る。その時、フロストは官邸を追われるニクソンが観衆やカメラに向かい笑っているが、最後に微笑みが失われる。その表情に彼は気づき目が釘付けになる。ニクソンの複雑さに気付き、フロストは頭の中が一杯になる。フロストは元コメディアンの英国のバライティTVの人気司会者、TVに移るシリアスさでは大統領とは180度違うといえるニクソンをフロストは自分と同じと感じたんだろう。バラエティ司会者と大統領の共通点どんなに辛くてもいつも笑ってなければならない。その事への気付きが物語の始まり。
このシーンの10秒ぐらい。TVに目が釘付けになるフロストは無言。上記のフロストの胸の内は私の受けた感想(妄想)で、その後シーンや、ロン・ハワード監督のコメンタリーでも語られる事はないが、この作品にとって、この語られざるストーリーを想像させるのが極めて魅力的だ。そしてラストへと結びついてゆく。
★★注意★★
<ネタバレします。>
この話はスレ違いの物語でもある。象徴的なのは靴。ニクソンがバカにした靴をフロストは気に入っていると勘違いし贈る。「断片だけを見ると勘違いする。」しかし、TVはニクソン敗北の断片だけを勘違いし垂れ流す。その前までは撮影スタッフたちも「もう一度大統領選に出馬すれば投票する」とまで言わせたニクソンの姿を忘れてしまったように。