mh

パーフェクトサークルのmhのネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトサークル(1997年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ボスニアヘルツェゴビナ紛争のサラエボ包囲さなかのサラエボを、詩人でアルコホリックなおじいちゃんと孤児の兄弟(兄は耳が聞こえない)がさまようロードムービー。
まだ紛争やってる最中に撮影されているため、臨場感がハンパじゃないというか、すべてが本物なのでリアリティが凄まじい。
・ここは走れ、先に行くななどの、市街戦やってる最中の街のあるきかた。
・即席の塹壕のように=弾除けになるように置かれている、車や市電のスクラップ。
・「三人目になるな」などのアドバイス。(ひとりめで気がついて、ふたり目で狙らいをつけて、3人目が撃たれる)
・配給の水の奪い合い。
・民は飢えているのに、ダンスパーティーやってる国連軍。
なかでもすごかったのは、白樺の木をめぐっての近所同士の争い。なんでそんなことにこだわってんのかわからないイコール、紛争についてのエクスキューズにもなっている。
詩人はアル中で、家族への思いと、希死念慮がごっちゃになってる。
ふとした瞬間に、避難したはずの家族が現れて会話する。街のあちこちに、首をくくっている自分を幻視するという、既視感もある演出があるんだけど、シンプルにやってるので効果的だし、個人的にそういうのは好物だった。
作中、セルビア人のことをチュトニクと呼んでいたのでいろいろ腑に落ちる。ボスニアヘルツェゴビナ紛争はWW2当時のチュトニクVSウスタシャの争いに端を発しているのだけど、それは古い話ではなく現在進行系の因縁なのだった。
姿は見えないけど、狙撃、爆撃してくるセルビア人たちについて、どんなひとたちなのか子どもたちが噂するシーンがあった。首がない。怖くて足しか見なかったなど、すごい会話だった。
「世界がほっとくわけない」というセリフは耳が痛い。
世界的に埋もれている映画のようで、ろくに情報がないので、あらすじを忘れないためかいておくと、両親がいるドイツへ孤児を送り出すため、国連管理下のサラエボ国際空港を目指す。滑走路の向こうにある政府施設にたどり着くまでの間に何人もの命が奪われている。そこで、イッヌと弟もやられて、詩人と兄が一緒になってお墓を作っているシークエンスでエンドだった。
関連作は「ブコバルに手紙は届かない」とか「ボスニア」とかだけど、いまは全部視聴困難になってる。どうなってんだ世界。
面白かった。
mh

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