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寒椿のmitakosamaのレビュー・感想・評価

寒椿(1992年製作の映画)
3.4
鬼龍院花子と同じく、原作は宮尾登美子の小説。時代に翻弄される女性の悲壮感溢れる生き方がせつない。

昭和初期の高知の遊郭が舞台。元侠客で女衒になった男が西田敏行。コメディな印象があるが、こういう役も似合うんだよなぁ。

物語は息子の目線で語られる。父の職業の女衒が嫌で母には逃げられるので、何かと女郎屋には反感を持つ。
反抗期的な感情とフェミニズム的な正義感が混同しているのがよくわかる。

バスのガイドだった娘が売られてくる。コレが南野陽子。ナンノが濡れ場を演じたのがやはり今映画の最大の売りになったね。
ナンノ自身はアイドルからの脱却を目指し並々ならぬ決意もあったろうが、ぶっちゃけその後の女優としての活躍は見られなかったよな。

牡丹の源氏名で売れっ子になる。素人ぽくて儚げで薄幸そうなイメージが人気の秘訣だと。いつの時代も男の趣味は変わらんのう。この薄幸さが初濡れ場に挑むナンノと被る。

息子と牡丹の絡みがもっとあった方が、より深みが出たんじゃないかなとは思う。

地元選挙に対し金と権力が渦巻き牡丹も翻弄される。元力士(高嶋兄)に恋慕されたり色々大変。

西田敏行の風貌からは、牡丹に惚れられる要素が無いのが如何ともし難い。もちろん人柄に惚れ見た目を気にしないことは充分ありえるが、映画のリアリズムとは違うからね。

しかし、ラストの山場が殴り込みなのが若干の興醒め。お陰で東映ヤクザ映画と大差なくなっちゃう。やはり文芸としての終わり方を違う形で見たかったな。
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