大一

スワロウテイルの大一のレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
4.3
不思議な映画だった。
移民が円を稼ぎに日本に流れ円都(イェンタウン)ができ、そこに住む人たちを円盗(イエンタウン)と呼ぶ架空の時代の日本の話。だけれども設定にリアリティを孕み、今の日本もだんだんとそんな時代になりつつあるのではないかと感じた。登場人物たちはほとんどが海外からの移民のため役者は日本人であるが英語や母国の言葉を喋り日本語はほとんど出てこない。彼らは日本でお金を稼がなければ生きていくことはおろか、夢を見ることさえできない。そんな彼らにとっての円というものの価値が描かれ、同時にその価値観を乗り越えていくのが一つのテーマであると感じた。小林武史による劇中音楽も素晴らしく何処か懐かしみを感じながら優しさを持った曲が響き、貧しいなりに夢をつかもうとする彼らに寄り添う音楽であった。たくさんの登場人物の物語が絡み合う群像劇であり、アゲハ以外の人物にもしっかりとスポットが当てられている点が良かった。リュウリャンキにも円都や故郷を思う気持ちがあり、嫌いになれない。アゲハとドクターがスワロウテイルについての話をするシーンでタイトルの意味を回収するところがとてもいい。
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