サド和尚

ランド・オブ・ザ・デッドのサド和尚のネタバレレビュー・内容・結末

ランド・オブ・ザ・デッド(2005年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

今は鬼籍に入られた、彷徨える死者たちの王ジョージ・A・ロメロ監督入魂のゾンビ謝肉祭。
痩身長駆の王様は、194cmあるそうです。でかい!そしてとってもお茶目。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』が好き過ぎて、サイモン・ペッグさんとエドガー・ライトさんを召喚してしまったり、お気に入りのベストにショーンピンバッチを付けているところを見せてキャッキャしたりとやりたい放題。
一方、ペッグ、ライト両氏も「ロメロに演出してもらった!」とファンボーイぶりを全く隠しません。なんだお前らは。
素晴らしいことだと思います。詳しくは映像特典で。

本編は、ゾンビ・アポカリプスの真っ只中の情け容赦無いサバイバルが日常となった、大地も人心も荒廃しきった世界。世紀末的状況下でも結局は変わらぬ支配する者とされる者たちの確執や対立を描きつつ、リビングデッドの悲哀と怒りも並行して描いた、色々と考えさせる作品です。もはやどっちが亡者かわかりません。
そんな中で、わしゃ世捨て人になりたいんじゃよと言いながら、困っとる弱き人々を見捨てられないがために二重三重にどんどん面倒を背負い込んで難しい面をしているが、ひとつも不平不満を言わない人が、主人公です。
彼こそ人心最後の砦であり希望か。そりゃ、おすもうさんみたいなサモア人も感化されますよ。
そんな、人間の醜さと、尊厳と意地、そして少しの大事な優しみが詰まった物語。

人間ドラマを基軸としてはいますが、ロメロ王らしい死者を逸脱しないゾンビの中に新機軸・振り子頭とかが出てきたり、マジもんの怒りのゾンビオピニオンリーダーが出てきたり、なかなかに新鮮な肉を出してくる所はさすが。
特に渡河のくだりは、まるで南極ペンギンめいて水際でおろおろしている死者の姿で微笑まされ、たくさんのウィラード大尉となって上陸してくる死者の姿で息を飲まされ喜ばされと、実に素晴らしいシーン。Apocalypse Nowと違い、深い冥府の青に彩られた画は、まるで黄泉の国から決断的に返ってきた様な迫力と荘厳さ。
なんだか少し日本の彼岸ぽさも感じます。

娯楽作としても、派手さはそこまででも、ヘイトゲージマックスなやつは大体死ぬ、わかりやすくて楽しい快作でした。
サド和尚

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