タケミ

霧の中の風景のタケミのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
5.0
父を探して、姉弟が列車に飛び乗る。それが物語の幕開け。

世界の残酷さと優しさを同時にフィルムに映し取った奇跡的な作品。

アンゲロプロスの変質的な演出が前景化する手前の、物語と映像とが穏やかな関係を結んでいた時期にだけ可能だった子守唄のように穏やかなナラティブ。

悲劇は見えなくていい。深い霧に隠されればいい。それは現実を直視しない逃避とは違うのだとおもう。打ち捨てられた死者に白いシーツを被せるような、映像作家の慎ましさではないか。
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