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霧の中の風景のfilmoutのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.2
詩的な映像で語られる子どもの姉弟によるロードムービー。
長回しの多様、計算しつくされた人物配置により物語はかなりスローに語られるがその体感時間こそがこの二人の成長過程のようにも感じられた。
特に冒頭で夜の列車に吸い込まれてからラストの霧の中の風景までの間、精神的に濃い成長をするのは姉の方で、やっぱり女の子は早く大人になって男はいつまでも子どもなんだろうかとも。

しかしその成長過程には胸糞悪くなるような描写もあって、詩的である分なんという絶妙なバランス感覚の映画なんだと感じた。
テオ・アンゲロプロスはタルコフスキーっぽいんだろうなと思っていたけど唐突に度肝抜いてきたりして、結構やり方がえげつないな。好きだけど。

弟の健気な可愛さ、出会う大人たちのクズっぷりなどの容赦ない描写もさることながら、ロングショットによるものか、トラックや汽車や削岩機の全貌が巨大に捉えられていることで全ての小ささが浮き彫り。というかこれは、とにかくよく分からないまま前に突き進む姉弟の実感なのだろうと捉えられた。
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