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スケアクロウのSIのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
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2021.8.24
自宅TVにて鑑賞

出所したばかりの喧嘩っ早い大男とお茶目で小柄な青年は極貧のヒッチハイク中に出会い、男の夢の洗車業のためピッツバーグへはるばる向かうことに。男の妹の女友達のせいで刑務農園に入れられたりしながら男は怒りをユーモアに変える術を青年から学び絆を深めるも、青年は5年間放置していた妻子にもう会えないと分かり錯乱状態に。男は青年の治療費のために夢のための全貯金をはたくことを決める。

アルパチーノ×ジーンハックマンのロードムービー。監督は写真家あがりのシャッツバーグ。
通常より長いオープニングクレジットからかっこいい。荒野の道路で車を待って落ち着かない険悪な二人を映す。以降も構図をしっかりととって、長回しで映していく。名優二人の芝居をじっくり楽しむ映画。
若干テンポ感が渋いか。

怒る男(ジーンハックマン)と茶化す男(アルパチーノ)という一見対照的な二人。ラスト、アルパチーノは5年間放置していた妻子の家の前で電話をかけるが妻は、もう地元のダサい男と再婚してしまったことを明かし、アルパチーノへの恨みから子供は死んだと嘘をつく。
錯乱したアルパチーノは病院に担ぎこまれ意識を失う。ジーンハックマンが駆け寄り「お前が必要なんだ」と叫ぶ。怒りの裏には孤独が、ユーモアの裏には苦悩がある。
怒りもユーモアも、実は同じ現実逃避の手段。深みのある、素晴らしい映画。

アル・パチーノの妻を演じたペネロープ・アレンも、電話越しのワンシーンだけなのだが、哀愁と恨めしさと切なさのどれもが、芝居が良すぎた
アルパチーノはダスティンホフマン的。こんなコミカルな芝居も出来るとは知らなかった。

ラストにグッと持っていかれる、名作でした。
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