つるつるの壺

スケアクロウのつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

身長差のある男同士がアメリカンドリームを夢見てグダグダやっているという設定は『真夜中のカーボーイ』を想起。

暴力的なマックスと陽キャなライオンが最初に出会う場面が良い。風の音だけが聞こえる閑散とした道路を挟んで向かい合うマックスとライオン。赤の他人だった二人が少しの会話とマッチを介して距離を縮めていく過程が静謐に描かれている。

短期で暴力的なマックスをライオンの陽気さで中和しながら二人の絆は深まっていき、互いに補完し合う関係性になっていく。
そんな陽気なライオンが刑務所で性被害を受けてから人格に陰りが見えてくる。バーで喧嘩を初めたマックスがライオンの様におどけて場を収めるところを見たライオンは、客観的に自身が道化であることを自覚し、身重の妻を捨てて家を出た過去から復讐され精神崩壊する。子供にプレゼントするはずだったランプはもう灯ることはない。ライオンの妻との関係性は身から出た錆であって、ここで許しを与えない展開は個人的に好み。

褒められるような生き方をしてこなかった二人だが、それでも生きていく為に心の支えを互いに求め、その片方が失われた。それは悲しいことである。マックスが貯めた洗車屋開業資金は往復切符に消えていくだろう。