がちゃん

スケアクロウのがちゃんのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.1
時々めちゃくちゃ見直したくなる映画ってありますよね。
私にとってこの作品がそうです。
『スケアクロウ』(1973)ジェリー・シャッツバーグ監督作品です。

砂埃が吹きすさぶ中、6年の刑務所生活から釈放されたマックス(ジーン・ハックマン)と、5年間の船乗り生活を終えたフランシス(アル・パチーノ)が出会う。

始めはフランシスにつきまとわれて迷惑がっていたマックスだったが、
煙草の火がない時にフランシスが最後のマッチ一本をフランシスが譲ってくれたことにより、二人は親しくなり、一緒にヒッチハイクで旅をすることになる。

そこでマックスは、
「フランシスという名前は女みたいだからライオンと呼ぶ」といい、
フランシスのことを「ライオン」と呼ぶ。

二人の性格は正反対。
方や喧嘩っ早くて神経質なマックスと、
方や人を笑わせることが好きな大らかな性格のライオン。

マックスは刑務作業などで稼いだ金を元手に洗車屋をするためにピッツバーグへ、ライオンは置き去りにした妻とまだ見ぬ5歳の自分の子供にプレゼントをデトロイトへ向かう。

一緒に旅を続けるのだが、マックスの喧嘩っ早い性格が災いしてトラブルが絶えない。
妹らと一緒に呑んでいたバーで乱闘騒ぎを起こし労役所へ逆戻り。

労役所でも要領よく振舞い比較的楽な労務に就くライオンと、
正反対に過酷な労務に就かされるマックス。

労務所内での二人の仲は最悪だったが、
ある日、牢名主のジャックにライオンが暴行を受けることを知ると、マックスは敵討ちをしてジャックを叩きのめす。

そんなこんなで労役所も退所し、
いよいよ二人は目的地に行くことになる。

デトロイトに着いて、いよいよ妻と子供に会うことになるのだが、
マックスは、「いきなり行くと驚かれるから、先に電話をしてから訪ねろよ」とアドバイスを送る。

ライオンは5年ぶりに妻に電話をかけるのだが・・・

ここからの展開は正直言って悲しすぎて書けません。

二人の友情がとってもいいんです。
それに尽きると思います。
それでいてベタベタしていない乾いた感覚。
ほんとに短気なマックスがライオンと一緒に旅を続けていくうちに、次第に穏やかな人間に変わっていくところが自然でいいんですよね。

マックスは日頃から上着を6枚も7枚も着込んでいる超厚着人間。
その彼が酒場の客との喧嘩の和解をするために一枚一枚服を脱いで行って
他の客からも笑いと拍手を受けるシーンなんかとってもいいんです。
ジーン・ハックマン上手い!

上手いといえば、
アル・パチーノの自然な演技にも引き込まれます。
ずっと抑え目な演技でやさしい感じの彼。
それだからこそクライマックスでの彼の豹変には涙が出ます。
すごいですね。
公園の池で多くの子供たちと遊ぶ場面は忘れられません。

物語は悲劇で終わるのですが、ラストでマックスがピッツバーグ行きの乗車券を往復で買うシーンで、希望のようなものが見えました。

この作品カメラもいいですね。
撮影は『ディア・ハンター』などで優れた映像感覚を見せるヴィルモス・ジグモンド。
オープニングの砂埃の中二人が出会うシーンが特にいい。

タイトルの『スケアクロウ』とは案山子のこと。
この案山子という言葉によって二人の性格の違いを表しています。
この性格描写もくどくなくて好きです。

悲劇なのに爽やかな印象が残る本作。
おススメです!





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