櫻イミト

炎のいけにえの櫻イミトのレビュー・感想・評価

炎のいけにえ(1974年製作の映画)
3.5
イタリアのカルトな人気を誇る猟奇スリラー。主演は「4匹の蝿」(1971)のミムジー・ファーマー。イタリア原題は「MACCHIE SOLARI(太陽の黒点)」。

猛暑に襲われたローマでは自殺が多発。 モルグ(死体安置所)で働く検死医シモーナ(ミムジー・ファーマー)は次々に運ばれてくる変死体の解剖に追われノイローゼ気味だった。その頃、シモーナのアパートにベティという女性が訪ねてきた。彼女は上階に住む父ジャンニの愛人だった。ベティは「打ち明けたい秘密がある」と告げるが、自室の電話に呼び出され戻ってこなかった。翌日、ベティは顔を撃ち抜かれた変死体となってモルグに運ばれてきた。自殺と断定されたが、ベティの兄ポール神父は「ジャンニに殺された」と主張する。それ以後、シモーナの周辺で不可思議な事件が頻発する。。。

奇妙な味わいのB級スリラーだった。冒頭から太陽のアップと様々な自殺シーンが切り返されサイコなムードを盛り上げる。加えて主人公が「自殺と偽装自殺」の論文に取り組んでいるため、部屋には大量の変死体の写真が貼られ研究の為に“殺人博物館”に足を運ぶ。始終、猟奇的なビジュアルが出現する。ただ、映像に耽美性は感じられない。暑い夏の日常に、脈絡のない白昼の悪夢が連続するような印象だった。

シナリオも演出もスムーズではなく唐突な出来事がつぎはぎのように重なっていく。計算されているのではなく演出が下手なように思える。しかし結果的にそれが個性的な味わいになっていて、本作をカルト映画たらしめているのだと思う。
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