櫻イミト

恋の櫻イミトのレビュー・感想・評価

(1971年製作の映画)
3.5
カンヌ・パルムドール受賞作。監督は「召使」(1963)「銃殺」(1964)のジョセフ・ロージー。思春期を迎えた少年の初恋悲話を描く。原題は「go-between(伝言人)」。音楽はミシェル・ルグラン。

20世紀初頭イギリス。12歳のレオは夏休みの間、貴族階級の友人の別荘で過ごすことに。そこで出会った友人の姉マリアン(ジュリー・クリスティ)に淡い恋心を抱いたレオは、小作人の男テッドへの文通の配達人を請け負うのだが。。。

ロージー監督の印象は意地の悪い作風。本作もさぞかし主人公が酷い目に合うのだろうと思いながら臨んだので、序盤に有毒植物ベラドンナが登場した時には「これで誤って大量殺人するのかも」と勝手にハラハラした。しかしそんなことはなく、物語としては割と真っ当な悲劇だった。

だが、ロージー監督の意地悪い演出は他に用意されていた。それは、予感を許さずにたびたび導入されるフラシュ・フォワード。これにより観客は、少年レオの未来が限定されていくのを感じはじめ、鑑賞後には何とも虚しい気分にさせられるという仕掛けだ。流石はロージー監督で、ペシミスティックな作家として期待を裏切らない一本だった。

※原作は小説「恋を覗く少年」。
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