Yui

少年と自転車のYuiのレビュー・感想・評価

少年と自転車(2011年製作の映画)
3.9
父親に捨てられ、養護施設に入れられた少年シリルの傷付き閉ざされた心の成長を描き、それを傍で見守るような作品。

ダルデンヌ兄弟は初鑑賞ですが、とても好みでした。心に残る作品でした。

苦しいシーンが多々あるんだけど、自転車がキーポイント。11歳の少年にはどこに行くにも自転車が必要だし、父親に買ってもらった自転車。冒頭でその大切な自転車さえ、父親に売られてしまっているのに、その事実を信じない健気さと、信じたくない傷付いた心に、ほんっとに苦しくなった。父親が悪いのに。「盗まれたんだ」と言い続けるシリル…苦しい…。

どんなに悪さをしてもワガママを言っても、その行動の全てが、父親が迎えに来てくれる、父親に会いたい、頭の中はもうそれしかないんですよね。

そんな中、週末の里親になった美容院経営者のサマンサ。彼女の気持ちの全ては分からないけど、愛情深いし、何か繋がりを感じたのかなと思います。彼女が居てくれて本当に良かった。シリルにとってもそうだけど、視聴者としても何度も彼女に救われます。

淡々とシリルを追う作品で、音楽もほぼないのにこんなにも惹き付けられるんだなぁ。エンタメ性もないんだから、凄い。でも、淡々としてるからこそ、シリルの心情や周りの優しさが際立って、心に響くんだと思います。もちろん監督が上手いです。

日本の育児放棄から着想を得て作った作品との事ですが、やっぱり子供には子供らしく笑っていて欲しい。

必要とされたい、愛を感じたい、誰もが思う気持ち。シリルにも、たくましく子供らしく育って欲しいなと願ってしまう、考えさせられる作品でした。

無条件の愛に血は関係ない。
子供を子供でいさせてあげられるのは、
やっぱり愛だと思う。



2021-163
Yui

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