あつお

おくりびとのあつおのネタバレレビュー・内容・結末

おくりびと(2008年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

死を強く意識させる映画。
主人公の小林大悟は東京でチェロ奏者として働いていた。しかし、所属する楽団は解散となり、地元で納棺師を勤めることとなる。初めは訳もわからず、NKエージェントの社長である佐々木について行くだけの日々。人が腐敗した姿に嫌悪感を抱き、精神的に不調をきたす場面も描写されている。しかし、佐々木の納棺の手捌きに次第に魅了されていく。人間には一人一人にストーリーがあるのだ。この世に生きる一人一人との美しい物語があるのだ。彼ら、彼女との最後の瞬間を美しいものにするために、その人の存在を美しいまま終わらせるために納棺師は存在する。小林大悟自身も、自分のそんな役割に自信を持ち、周囲の共感も得るようになる。最終的に、長年音信不通となっていた父を送りだす。
納棺師というと皆さんはどんなイメージを持つものだろうか。人間は死に対して負のイメージを抱くもの。人間は生存競争の中で、死を本能的に避けるように生きてきた。死に対して最も近い立場にいる納棺師に対しても、あまり良いイメージを持たないのではないか。しかし、人生は輪廻するものと考えれば、この世の終わりが全ての終わりではない。死とは新たな世界への門をくぐる行為に過ぎないのだ。そうやって、死をポジティブに捉えることができれば、世界を新たな視点から見ることができる。納棺師という職業にもポジティブな面を見出せる。
身近な誰かが命を落とした時、突然の別れを経験したとき。人は悲しみに暮れるものだと思う。しかし、その別れを悲しいものとして終わらせない。一つの区切りとして、その人生を美しいものとして装飾してくれる人がいる。それだけで幸せなのだと思う。
あつお

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