さまよえる象人間

どろろのさまよえる象人間のレビュー・感想・評価

どろろ(2007年製作の映画)
1.9
映画は小説の挿絵ではなく、限られた時間の中で映像と物語を語ることを要求されるメディアである。だからこそ漫画や小説を原作とした映画では当然映画ならではの形式に沿ったアレンジが求められるわけだが、仮にその脚色が映画のクオリティに何ら貢献しない場合はどうなるか。この映画はその点を考える上で格好の典型例である。
この映画を観た大多数の人が「これどういう設定の世界なん?」と感じることだろうが、原作の戦国時代を架空のアジアの帝国に移し替えた脚色は全くもって成功していない。出てくる人物はことごとく日本語を話す日本人であるし、冒頭に登場するベリーダンスを踊る踊り子に代表されるエキゾチックな住人はほとんど物語に関係しない。であれば原作どおりなんちゃって成分の入った戦国時代でも問題ないと思うのだが、ニュージーランドロケを念頭に置いた改変であるにしても意味不明である。

物語面でいちばん問題なのは、主人公百鬼丸の過去やどろろが女であることをいきなり冒頭で一気に(いやホント一気に、だよ)説明していることである。物語の尺の関係でそうせざるをえなかったとしても、これはバディものの冒険活劇としては致命的である。お互いが次第に相手の立場に共感していく過程が描かれにくくなり、結果物語から躍動感が消えてしまうからだ(実際映画はおそろしく淡々と話が進む)。

アクションは健闘しているが、特撮関係は意図はどうあれ質が低い。

キャスト面で言えば、妻夫木聡と柴咲コウは漫画映画には不向きであるということを思い知らされるだけに終わっている。これは中井貴一をはじめとする敵方が荒唐無稽な役どころをきちんと抑えているだけ余計と目立ってしまった。特に柴咲コウは不味く、あからさまに女にしか見えないのにガラガラ声の聞き取りにくい台詞回しで男口調の話し方をされても一向に響いてこない。もう少し若くてボーイッシュな子が使えなかったのだろうか。