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グリーン・ホーネットのodyssのレビュー・感想・評価

グリーン・ホーネット(2010年製作の映画)
2.0
【正義の味方は偏見とともに?】

正義の味方もなかなか難しい時代になった。この映画を見るとそれを痛感する。(ここまで『キック・アス』のレビューとまったく同じ。省エネが過ぎるか。)

疑問箇所が何点かある。

「グリーン・ホーネット」って、セス・ローゲンのことだとなぜ人々は認識するのだろうか。映画を見ている限り、活躍しているのは助手のジェイ・チョウである。特にはじめのあたりでは彼がカンフーもどきで悪をばったばったとやっつけている。対してローゲンはさっぱりである。普通に考えれば、ジェイ・チョウがグリーン・ホーネットで、ローゲンがその助手と見るべきであろう。なのになぜかそうならない。どうして?

以上は人目につく部分のことであるが、人目につかない内実から言っても、助手は高性能車だとか色々発明しているのに、ローゲンはさっぱりである。自分で何かをやるということがきわめて少ない。新聞社主ではあるけれど、それだって自分で会社を始めたわけではなく、父も社長だったから自分も社長であるというだけのこと。

つまり、この作品、きわめて古いというか、差別的な映画だと思うのである。主役をはる正義の味方は白人男性に決まっており、アジア人は助手でしかない、ってのがあらかじめ作品の先入観としてインプットされている。50年代や60年代ならいざ知らず、21世紀の今、これでいいのかっ!?

それに。助手はカトーって日本人の名なのに、何で上海出身なんだ。日本人なのか中国人なのか、どっちでもいいけど、どっちかに決めろよ! これまた、アジアへの認識度が低かった昔ならいざ知らず、日本、そして経済発展著しい中国がアメリカにつぐ経済大国になっている現在、こんないい加減な設定でいいのか!? 日本映画にアメリカ人が出てきて、「わたし、生まれはロンドン、育ちはパリです」と言ったらアメリカ人は納得するのだろうか。

というふうに、非常にデタラメな作品で展開もいい加減。でもコメディだとすれば別にいいじゃんという見方もあり得るとは思うのだが、エンタメにしても見終えた後に舌に残る味が大事なわけで、そういう観点からするとどうもイマイチと言うしかないのである。
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