つるみん

破戒のつるみんのレビュー・感想・評価

破戒(1962年製作の映画)
3.7
【脆弱の中の光】

島崎藤村の原作『破戒』を〝炎上〟や〝野火〟〝犬神家の一族〟の市川崑が描く切ない物語。

信州飯山の小学校教員である瀬川丑松は父の突然の死に際して、被差別部落出身の素性を誰にも明かさないと誓う。しかし部落民解放運動家である猪子蓮太郎を敬う丑松は、彼から君も一生卑怯者として通す気かと問いつめられる。心が揺れ動くが彼は断固拒否し、ひたすら身分を隠す。だが丑松が部落民であるという噂が流れ、追い打ちをかけるように蓮太郎の死が突然訪れる。丑松の生きる道は…。


本作は主人公である瀬川丑松の自我の内面部分を繊細に描き切っていて、1つ1つのシーンが苦しく切ない。常に自分の弱さを隠し込んで生きてきた丑松にとって生徒達に自ら部落民だということを告白するシーンは辛くて見ていられない。恐らく小学生たちは詳しい事はわからないが先生が居なくなる雰囲気を感じ取り、思わず涙が出てしまったのであろう。彼の吐露に我々も涙なしには見られません。

この物語の歴史や背景を一言で言い表す事は非常に難しい。現に僕は部落問題については無知です。ですから、この苦しさや切なさを只々受け止めるしか出来ませんでした。今も尚、存在する部落問題は、その差別の実態は見えにくくなったものの「様々な日常の場面で差別は残っている」という事実を決して忘れてはいけません。

この映画を観ることによって部落問題について調べる機会を得ましたし、それだけでも十分この映画の存在価値というものは大きいものだと思います。

是非ご覧下さい。
つるみん

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