このレビューはネタバレを含みます
禁断の逢瀬からの大恋愛の話かと思いきや、まさかの悲恋でしかもナチス絡みとは。
本当ならば昇進も喜ばしいはずだけど、文字の読み書きが出来ないハンナは事務職は難しい。
彼女が文盲でなければ、アウシュヴィッツの看守になることも、裁判の場に出ることも、刑務所で最期を迎えることもなかっただろうと思うと、もちろん犯した罪は重いものではあることは大前提ではあるけれど、時代に翻弄された悲しき十字架を背負った女性だったように思う。
教会で涙していたのは後悔の念からだったのではと感じた。
最期の踏み台が本というのもやり切れなかった。
一方で彼女に関わったマイケルにとっても、15歳という多感な年頃の刺激的な出会いから、青年期、中年と彼の人生観を大きく変える転換期に度々ハンナが関わり、マイケルの気持ちを掻き乱していく。
文盲であることを頑なに隠したハンナのプライドを尊重することへの葛藤は並々ならぬものがあっただろうし、ハンナの最期に至ってもマイケルも大きな十字架を背負った形で悲しい。
また、アウシュヴィッツから生き延びたマーサの対応や表情、返答は彼女の複雑な感情が滲み出ていて、観ていて辛い。
ラスト、娘は父の話を聞いてどんな反応をするのだろう。
軽蔑するのか、驚くのか、共感するのか、こちらはこちらで色々と複雑になりそうで、話すことが正解なのか分からない。
とにかく、全体的に辛く悲しい物語だった。
