sora

愛を読むひとのsoraのネタバレレビュー・内容・結末

愛を読むひと(2008年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

無責任とも思える優しさから刑務所にいる女に朗読のテープを送り続けた男
女が拙いながら必死で綴り送り続けた手紙に、最後まで決して返信しなかった男
待ち望んだ相手を前に女が伸ばした手を、目を逸らしそっと振り払った男
男は過去の女への想いを中途半端に断ち切れず、結果的に女を傷つけてしまった

真っすぐに愛情をぶつけてくる年若い男を自分なりの方法で愛した女
非識字であることを頑なに認めたがらなかったにも関わらず、男に手紙を書くため字を学んだ女
再会を喜んだのも束の間、自分に対する男の愛情は既に失われ同情に変わっていることを悟った女
老婆のようになってもまだ昔の男に愛されていると希望を抱くことで生きながらえてきた女は、最期に自ら死を選んだ

仮に女が出所していれば男はそれなりに世話をやいただろうが、女は死をもってそれを拒んだ
望むものが手に入らない諦念からなのか、男の負担になることを自尊心が許さなかった、あるいは苦悩したからなのか、それとも別の理由からなのか
自死を決意するまでの女の気持ちは底の見えない真っ暗な井戸のようだ

男が女を愛したのはまだ少年ともいえる時期のほんの一夏
その後数十年を経て男のとった行動は自己マンとも卑怯とも言えなくはないが、心中察するに余りある

痺れるような余韻を残す映画にたまに出会う
本作はまさにそれだった

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