まさなつ

タレンタイム〜優しい歌のまさなつのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.3
2009年のマレーシア映画。
監督はこれが遺作とのこと。

多民族・多宗教のマレーシア。
「タレンタイム」というのは、学校内の音楽祭。決勝に残った生徒と、バイクでの送り迎え役の男の子。それぞれの3つの家族の物語。

最初、どこか捉えどころがなく戸惑ったのですが、ベタな笑いや人々が見せるちょっとした優しさが心地よくなって、徐々に監督のペースにハマっていきました。

悲しみのそばには笑いがあり、笑いの先には悲しみがある。そうやって人は生きていくんだよって、押し付けも誇張もなく、やんわりとしているのに強く、心に響いてきます。

多民族、多宗教ゆえにお互いには容易には繋がれない目に見えない壁の存在。その壁は今も高く、人々の対立や断絶を生むのだけれど、歌や音楽にはそれを越える力がある。この映画は、そんなことを素直に感じさせてくれます。

ドビュッシーの「月光」が、とても効果的に使われていました。
歌も、マレーシアの人が作ったものが使われているそうですが、どこかで聴いたことがあるような懐かしい感じがします。
歌や音楽が、それぞれの民族や宗教の違いを優しく包み込むようです。異民族の男の子どうしがギターと二胡で重奏するシーン、とても好きです。

そして、スクリーンの中から、心地よい風が流れてくるようでもあります。確かにそれを肌で感じました。
とても素敵な映画。いつまでも観ていたい!
まさなつ

まさなつ