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血と骨のMrMINEのレビュー・感想・評価

血と骨(2004年製作の映画)
4.6
本当の笑顔を見せる人はこの映画において誰ひとりとしていない。

なんて暗い映画なんだ、気分が沈む映画なんだと思うかもしれないが、最後まで集中して見れてしまう不思議な映画だった。
この話が決して創りものではないからなのかもしれない。
“事実は小説よりも奇なり”という言葉があるように実話だからのめり込むように見入ることができたのかもしれない。

原作は在日朝鮮人の梁石日。実父を基に執筆した小説だ。
戦前戦後にかけての大阪を舞台に、一旗あげようと身一つで異国の地へやってきた朝鮮人の男の物語。
時代背景、文化の違い、朝鮮人からみた戦前戦中戦後の日本・大阪。
様々な思いや、生き様、環境が朝鮮人=お隣の外人からの視点で伺い知れる作品だ。

ビートたけしが暴力に生きた主人公を演じる。
演技力のナチュラルさにただただ脱帽。凄まじい憑依役者だ。
部下のみならず、嫁、息子、娘にまで暴力を振るい、愛人には尽きない。暴力と性の映画。生々しいシーンが数多く描かれている。しかし、それさえもナチュラル。

家族や周りの人間から恐れられた男の行く末は…。
因果応報、人生において自ら巻いた種は自ら刈り取らなくてはならないとは先人たちの教訓だが、この男はその人生を謳歌したのではないか?
金に執着した夫の姿、暴力に生きた父親の姿、威張る男の姿がいつしか儚く見えてくる。
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