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ゆれるのkisekireiのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
4.2
そこにある真実はとても曖昧模糊で、
人の心の様に流動的であります…

何も前情報はなしで見たのですが
前半のどこかとぼけた印象から一転
後半の物憂げな雰囲気。
兄と弟の印象の逆転。

そして結末に向けて、観るものに「あなたはどう思いますか…?」と投げかけてきます。

私は個人的に「ここから先はご想像にお任せします」と言う、最近の邦画にありがちな、
伏線回収なしなし映画が大嫌いなのですが
これは、そんなんじゃない。

そんなことが伝えたいのではないんだよね。
まさに、冒頭に述べたように、人の心や見ているものと言うものは本当に頼りなく、あやふや。

「これはすばらしき世界」でも感じたことだけど、兄が抱えてきたもの、父親の生き方、弟の人生、それを語らずとも想像させるんですよね。
本当に妙々たる脚本だと思う。

31歳の若さでこの作品を撮った監督に、心から拍手を送りたい。

また、役者陣。オダジョも香川照之も良かった。
最近の香川照之はちょっと顔芸が過ぎるし、お偉くなられて謙虚さが無くなってきたので(口では役者は底辺とか言いつつ)このくらいの時の演技はすごく良いですね。うますぎる。


そして。もうこれは声を大にして言いたい。

しょーもない映画ばっかゴリ押しせんと、こんな映画にお金を出さんかいな。
邦画はお金がないんだから、心にきちんと訴えかけてくる映画をもっともっともっと世の中に発信してほしい。

「すばらしき世界」は、賞レース(showレースかよとも思うけど)なんかで受賞されなくても素晴らしい作品なんだけど、そこまでしないと人の目に触れにくいんだったら、ぜひ栄冠を手にしていただいて、西村さんにはもっともっと、素晴らしい作品を撮ってほしい。
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