まや

ゆれるのまやのネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる(2006年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

前から気になっていた作品。映画館でやるのとオダギリジョーに会いたくて鑑賞。

結構しっかりとした物語と、人間の汚い感情や嘘や羨望などが緻密にグチャグチャに絡み合う感じは観ていて息苦しさを感じた。(褒め言葉だが、途中何度も深呼吸しないと観ていられなかった)

長男で、田舎の実家のガソリンスタンドを継ぎ、家の面倒ごとは文句言わずにやってきた兄。それとは対極的に東京に出てカメラマンとして自由に生きる次男。この2人の兄弟が幼馴染の女の死に関する裁判を通して向き合っていく物語。

橋のシーン、一瞬で音が止まり自然が映し出され、居たはずの人がいなくなる。それを目の当たりにしている別視点の人物。ここからして、物語がどう進んでいくのかハラハラしていく。最初は弟も兄を助けようと真実を黙って庇っていくが、自分に対しての嘘や自分の知っている兄でない事の怖さ、またそれに伴い自分の保身の気持ちも強くなり、法廷で真実を話してしまう。

しかし、その7年後、兄が出所する連絡を受け、母親の形見分けで貰った、フィルム映像を弟が見ることで本当の真実が映し出される。(ここの演出がうまいなと思った。最初の兄の腕の傷跡がなるほどなと思ったし、ずっと弟主観である観客も驚かされる)

こういった1つの特殊な出来事の中で、相手に向き合わないといけない、ひいては自分と向き合わないといけないということがテーマかと思うが、それが嫉妬とか、嘘とか人間の汚い部分だけでの掘り下げだからか観ていてすごく疲れてしまった。人間の汚さに全振りしている感じが浮き彫りにはしっかりなっているが面白いかと言われると別に面白くはないなと思った。(邦画特有の暗さが全面に出ている感じ)

自分自身洋画の方が好きで、邦画のただひたすら暗い感じが好きではなかった時があるのだが、その時の気持ちになった。

ただ、オダギリジョーも香川さんも2人とも演技が演技に見えなくて、本当にその人のように見えたのは流石だなと思った。この2人の人間性がしっかり出てきているので引き込まれはした。

監督とオダギリジョーのお話も面白かった。大分前の映画だから、今できないことがカメラの前でできているというのが印象的。その時代の世相が反映されていて、映画というものは残っていくものと監督がおっしゃっていた。
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