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アシク・ケリブのBONのレビュー・感想・評価

アシク・ケリブ(1988年製作の映画)
4.2
映画界の巨匠たちが敬愛した天才セルゲイ・パラジャーノフのタルコフスキーに捧げた遺作。

原作はロシアの詩人ミハイル・レールモントフによる恋物語。 貧しく心優しい吟遊詩人の青年アシク・ケリブが、裕福な商人の娘である恋人との結婚を彼女の父に認めてもらうために修行の旅に出る物語。途中で白馬に乗った爺さんが現れて無理やり違う男と結婚させられそうになっている娘の元へ戻るアシク・ケリブ。

『ざくろの色』(1969)のように、熱に浮かされた夢を見ているかのような幻想的で、ストーリーがあるようでない物語ではなく、一直線にロマンチックな物語だったものの、パラジャーノフ特有の極彩色に彩られた映像は動く絵画のようで映像の魔術に憑りつかれてしまった。

ルビーの色彩、花と鳥、見たことのない果物や石榴、豪華絢爛な衣装、それを肌に纏う眉毛の繋がった独特な登場人物たち、美しい民族音楽と舞踊…。

まさに異国の空気・香りが漂うようなスパイスの効いた映画体験で、それだけで本作を鑑賞する価値があると思える作品だった。

旧ソ連邦グルジアに生まれたアルメニア人のパラジャーノフ。 激しい弾圧を受け、複数回にわたり投獄され、彼の才能を世界から奪い取ってきた旧ソ連。

彼の唯一無二の作品は今後も後世に語り継がれていくと身に染みて分かった。
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