菩薩

フェリーニの道化師の菩薩のレビュー・感想・評価

フェリーニの道化師(1970年製作の映画)
4.2
ジャック・タチの『パラード』が彼が魔法使いであることの証明であり、彼自身がパントマイマーであった出自を辿るものだとしたら、この作品はフェリーニが魔術師である事の証明であり、そんな彼を生み出したものがサーカスであり道化師であったとのルーツを巡る探訪記の様なもの、となれば『リアリティのダンス』なんかにも近いのかも。作品自体は三幕構成。序がフェリーニ少年が魅了され恐怖に慄きもした古き良きサーカスと、世界そのものが彼にとってはでっかいサーカス小屋であった幼少期への誘い。破はそんなサーカスを舞台に活躍し、今は(時代に必要とされなくなり)各地に散らばりひっそりと暮している道化師達を訪ねていくドキュメンタリータッチの紹介VTR。そして急が「道化師は死んだのだ」との言葉で始まり、逆にその強烈さが「道化師は死なない」との意思の強大さも印象付ける盛大な葬送であり、文字通り大団円の祝祭へと繋がっていく。フェリーニ少年が愛したかつての「見世物」としてのサーカスと道化師に対する郷愁と惜別が詰め込まれており、鎮魂の調べを奏でるトランペットの響きにこれでもかと琴線を震わされる。なんせフェリーニ×サーカスの相性の良さよ、ポテトサラダ×いぶりがっこくらい良いから騙されたと思って一口食べてみてほしい、フェリーニの魔力が冴え渡っている。最近まで日本語字幕が付いてなかったがいつの間にか付けられた模様。人類よ、今がチャンスだ、ありがとうAmazonプライム(って言いながら俺はDVDで観たのだが…)。
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