OMC

マッチ工場の少女のOMCのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.9
アキ・カウリスマキ労働者三部作の3本目。
マッチ工場で働く不幸な女性を描いた作品。
無表情で抑揚のない話し方の登場人物が、つまんなそうな日常を過ごしているのは他の2作品と同じ。あっ、またこのテンションでいくやつね、と舐めてかかったら、後半のとんでもない展開にびっくり。大好物なヤツでした。3本のうちで一番好きかもしれない、と言うか、他の2作品を見た上でこれを見たのが正解だったのかも。
映画内ではTVニュースが、天安門事件のことを繰り返し報道する。でもこの映画は中国における民主化運動をテーマにしているわけじゃない。
監督は最新作「枯れ葉」で、ロシアによるウクライナ侵攻をラジオから流れるニュースとして記録に残した。きっと彼は意図的に、世の中で今起きている理不尽な事件への静かな怒りを記録としてとどめようとしているのだろう。
今作はエンタメとして大いに楽しめるが、主人公が可哀想な境遇であることには変わりない。見終わった後には、多少の爽快感とともにやるせなさが心に残る。しかしその先には希望も見える。不思議な映画でした。
OMC

OMC