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『武器なき戦ひ』に投稿された感想・評価

ナチス政権樹立(1933)の翌年にイギリスで制作されたユダヤ人差別を問い直す実話史劇。主演は「カリガリ博士」(1920)“眠り男”のコンラート・ファイト。監督は「奇蹟人間」(1937)のロウター・メンディス。原題は「Jud Süß(ユダヤ人ジュース)」。原作はユダヤ人作家フォイヒトヴァンガーの同題小説(1925)。

★6年後にナチスが本作を改ざんし、史上最悪とされるユダヤ人差別映画「ユダヤ人ジュース」(1940)を制作したことが有名。

1730年ドイツ・ヴェルテンブルク公国。ユダヤ人の銀行家ジュース・オッペンハイマー(コンラート・ファイト)は貴族に金を貸し付けて成功、差別され貧困にあえぐユダヤ同胞のために財産だけでなく地位と権力を得ようとしていた。そんな中、君主一族のアレクサンダー侯爵と縁ができ、取り入ろうと高価な装飾品や賭博の金を大量に提供。侯爵は大いに喜び周囲の反対をよそにジュースを宮廷ユダヤ人として重用する。着々と出世し国の財務官にまで上り詰めたジュースに対し、彼と亡妻の15歳の愛娘ナオミを預かっているラビ(ユダヤ教聖職者)の伯父ガブリエルは、決して魂を売り渡さぬようにと戒めるのだが。。。

見応えのある重厚な一本だった。単純な勧善懲悪ストーリーではなくユダヤ人万歳と言った保守的なイデオロギーに立つものでもない。主人公ジュースの過酷な生き様を通して、何百年も差別されてきたユダヤ人にとって誇りとは何なのかを厳しく描きあげている。これは人間の尊厳についての哲学的な作品である。

登場時からジュースは悪役の様でいて悲しさを秘めた複雑な表情をしている。彼が政治権力を手に入れようとした理由は、差別され貧困にあえぐユダヤ人同胞を政治的に救いたいという大志だった。その目的の為に好色な君主の言いなりになり、挙句には好意を寄せていた女性が毒牙にかかるのを黙殺してしまう。これが引き金となり余りにも大きな代償を払うことになるジュース。

正直言って最初は、ジュースの君主への取り入りは“大志のためには止むなし”と思いながら観ていて、それを毅然と戒めるラビの伯父には“きれいごと”な印象を抱いていた。しかし観終わって、自分がいかに資本主義的な価値観に染まっているのかを自覚させられた。ではジュースはどうすれば良かったのか?その答えは“どうすることも出来なかった”としか言えない。社会に根強い民族差別がある限り小手先の改善策はあがきに過ぎず、いかにユダヤ人差別が深刻かを本作の悲劇は徹底的に示している。

これだけセンシティブな内容を赤裸々に描けたのはスタッフ・キャストの出自によるところも大きいだろう。複雑なキャラクターの主役ジュースを熱演したコンラート・ファイトは、ユダヤ人ではないがドイツからの亡命組。ナチスのゲッペルス宣伝層が映画界からユダヤ人を排除した際、妻がユダヤ人のファイトが「私もユダヤ人だ(実際はキリスト教徒)」と言い放った逸話が残されている。演じたジュースは最後に亡父がキリスト教徒だったことが明かされるが、ユダヤ人として一生を全うする。その境遇は本人と似通っていてまさしく適役と言える。

同じく、監督のロタール・メンデス、美術のアルフレッド・ジュネ(ユンゲ)もドイツからの亡命組。ジュネはドイツ表現主義を代表する美術監督の一人で(※注)本作も本領を発揮。ファイトの出演もあいまって往年のドイツ映画黄金期の風情を漂わせている。娘ナオミに降りかかる残酷場面やラストシーンの空中処刑台は特に耽美的なインパクトが強く印象に残った。

本作がナチスによるユダヤ人差別に対応して作られたのは製作時期から考えても明らかだろう。ユダヤ主義のプロパガンダと捉える向きもあるかもしれない(全ての映画はプロパガンダ的側面を持っていると個人的には思っている)。現在の国際情勢を考えるとなおさら取り扱い注意の一本だとしても、本作に込められた問題提起は現在も有効であり、今だからこそ再注目し考察する意義があるのではないか。自分の場合は比較資料としてナチス版「ユダヤ人ジュース」を合わせて観たことでさらに考察を深めることが出来た。

★「カリガリ博士」でファイトと共演した名優ヴェルナー・クラウスはナチス版「ユダヤ人ジュース」にラビ役で出演し、ゲッベルスからは「国家俳優」の称号を、ヒトラーからは「ナチスの文化大使」と評された。それが戦後の戦犯裁判では、同作に出演したことが軽度の有罪判決を受け強制出国、彼の俳優生命を縮めることになった。

※注
美術監督アルフレッド・ジュネの代表作はドイツ表現主義映画「ヴァリエテ」(1925)。後にパウエルエ&プレスバーガー監督組の常連となり「黒水仙」(1946)などを手掛ける。

※撮影バーナード・ノウルズは「三十九夜」(1935)「サボタージュ」(1936) 「第3逃亡者」(1937)などイギリス時代のヒッチコック監督作の常連で、後に監督として「マジカル・ミステリーツアー」(1967※ノンクレジット)を手掛けている。

※脚本はグレタ・ガルボの渡米第一作「イバニエズの激流」(1926)などを手掛けた有名な女性作家ドロシー・ファーナム。

※娘ナオミを演じたパメラ・オストラー(ケリノ)は、後にジェームズ・メイソンと結婚。