半兵衛

大菩薩峠 竜神の巻の半兵衛のレビュー・感想・評価

大菩薩峠 竜神の巻(1960年製作の映画)
3.5
絵画の趣さえあった前作に比べると映像のトーンがやや落ちている印象だが、それでも三隅監督の抜群の映像センスや衣笠貞之助による原作のエキスを適度にまとめ見せ場を繋ぎつつスピーディーにお話を進めていく語り口により楽しく鑑賞できた。

ただ前作で悪の限りを尽くしていた机龍之介が段段とまともになっているし色んな出来事に巻き込まれていくだけなので、前作にあった悪漢ものとしての魅力が薄れていくのはちょっといただけないかも。ただ原作にしてもお話が進むにつれてそんな展開になっていったのでしょうがないのかも。

中村玉緒による、前作の悪女とは違う幸薄そうな女性像を巧みに演じる演技が役者陣のなかで際立つ。一方で前作では見せ場のあった見明凡太朗や本郷功次郎、山本富士子が単なる使いっぱしりのキャラになっていて物足りない。

一応前作からの続きになっていてラストの靄が冒頭に出てくるが、肝心の殺陣場面をすっ飛ばしいきなりその後になっているのが斬新。

後半出てくる映画黄金期の実力を感じさせる旅籠のセットと、それが一斉に燃やされるラストの火事場面が圧巻。

それにしても殺陣の場面でのそれまでのゆるい雰囲気から一変する鮮烈だが完璧なタイミングによるアクションの入れ方は、どことなくフランスの映画作家(ジャック・ベッケルやゴダール)に通じるものがあって興味深い。
半兵衛

半兵衛